昼――トリステイン魔法学院・厨房――
はっはっはっ、居心地がわりぃ。
モジモジと上目遣いに俺を見つめるシエスタ。
昨日のシエスタに対するプロポーズ――俺としてはプロポーズ“もどき”だが――を見て色々と噂を耳にした結果、何と言うか不審人物を見る目で俺を横目に観察している厨房で働いている面々。
いや、シエスタはもう、抱き締めて押し倒して最後まで突っ走っても構わないと思えるほど可愛らしいんだ。
多少と言うかかなり厨房の面々からの目は痛いが、俺の行動とかを考え合わせれば予想通りと言えば予想通りの状況ではあるんだ、これも。
「あ、あの、その、美味しい、ですか?」
「ああ、美味しいよ」
「そ、そうですか、よかった」
沈黙に耐えかねたのか当たり障りの無い事を口にして見たんだろうが、料理が美味しいと褒められるのは自分が作ったわけで無くても嬉しいらしい。
俺が喜んで食べている事か、マルトー親父の料理が褒められた事を喜んでいるのかはわからないが、どちらにしろ良い子だよな、シエスタって。
それにしても、この微妙な沈黙は俺に対する感情がまだ定まって居ない状況であのストレートなプロポーズされたから、リアクションに困っているんだろうな。
俺にプロポーズをしているつもりはなかったんだが。
「あ、そ、そうだ、えと、日本って、どう言う国なんですか?」
「日本、か」
話題を考え付いたんだろうが、上手い話題だ。
相手の事を知るには、その故郷の事を知るのが一番の近道と言えるからな。
生憎と、我には当てはまらないのだが。
「そうだな……食べ物はほとんど同じだし、似たような物もあるけどこっちには無い調味料の類があったりしたな」
「こっちには無い調味料、ですか」
「そ、味噌とか醤油とか味醂とか、後は嗜好品にも分類されるお茶とか」
「お味噌とかお醤油って言うのはわかりませんけど、『お茶』って、あの飲む『お茶』ですか?」
「ん、そうだけど」
「へぇ、私は飲んだ事も無いんですけど、飲むだけじゃないんですね」
「とは言っても、俺も話を聞いただけで俺がそう言う料理を出来るとか言う訳じゃないんだけどね」
驚いた様な顔をするが、こっちでも紅茶を使ったシフォンケーキとか……は、まだ無いか。
香付けの為に使うぐらいなら飲むのが普通だろうからな。
出がらしと言うか、飲み終えた葉を使っても良いとかTVでやっていた様な気もするけど、覚えてないのだからそれはそれで良いか。
別に、どうでも良い事だし。
「どんな風に作るんですか?」
「シフォンケーキを作る時に臼か何かで粉末にした『お茶』――抹茶って言うんだけど――を混ぜるとかそんな適当な話しか覚えてないんだ、ゴメン」
「ん〜、それって、紅茶でも作れるんでしょうか?」
「それは作れるよ、こっちの場合は紅茶と茶葉の両方を混ぜるとか聞いた気がするんだけど」
「そうですか」
微妙に残念そうな顔をしているのは、俺が知らなかったからか。
……どうにかすればマルトー親父が作ってくれそうな気がするんだけどな、何時か。
「さて、そろそろ給仕の方に行った方が良いんじゃないか?」
「え、あ、ホントですね」
シエスタにそう告げ、厨房の出入り口に視線を向けるとそこには既にデザートが並べられている。
こちらにそれとなく意識を向けつつも、きっちりと仕事をこなす辺りは流石だ。
「じゃあ、約束通り手伝わせてもらおうか」
「あ、はい、よろしくお願いします」
執事の着るタキシードがあれば力一杯ルイズをからかってやれるのに、残念だ。
まぁ良い。
二年生の半数位には俺の噂が伝わっている事だろうから、それで遊んで済ませよう。
それやったらルイズに迷惑がかかるからやれないか、そう言えば。
「ままならんモノだな」
「サイトさん、何か言いましたか?」
「や、何でもない」
「はぁ、それじゃあ、行きましょう」
「ああ」
とりあえずはお仕事だ。
――トリステイン魔法学院・アルヴィーズの食堂――
シエスタと一緒に行動すると後々シエスタに迷惑がかかるかもしれないし、俺一人がケーキを配って歩いたら生徒達が面白い反応をしてくれるだろうと判断し別々にケーキを配っているのだが、予想通り生徒達は面白い反応を見せてくれる。
執事はもちろん接客業をする場合は会話をしている人達の邪魔にならないように、必要な作業だけを見苦しくない程度に素早く行いすぐに下がる。
会話や食事に集中していたりすると気付かれない事もあるのだが、対面に座っている連中が気付いて何らかの反応を示し、それに追随する形で気付いてくれるので中々満足出来る結果を見る事が出来た。
主であるルイズにあれだけはっきりと『主で遊ぶ』と宣言しているのだ。
ケーキに何か仕込まれているんじゃないかと言う不安、同じ授業を受けていた者からは敵意、色々な感情が向けられてくる。
大半の生徒達は俺が何をしでかすかわからないと思っているのかほとんどが引きつった笑み浮かべて流してたが。
「なぁ、ギーシュ、今は誰と付き合ってるんだよ?」
「誰が恋人なんだ、ギーシュ?」
学生時代は恋の話で盛り上がるもんだが、プレイボーイ云々って話なんだろうかこのギーシュに対する認識って?
取り巻きが結構居る辺り人気があるんだろうなぁ、色々な意味で。
「つきあう? 僕には特定の女性はいないんだ、薔薇は多くの人を楽しませる為に咲くのだからね」
「それは違うぞ?」
前回は足元に落ちている香水の事をストレートに言って色々と起きて決闘になったが、さすがに今なら多少の気遣いは出来る。
多少だからどっかで破綻しそうな気もするし、何故か今回は足元に香水瓶が落ちてないんだが。
「ほぉ、どう違うと言うんだい?」
「俺達男は花なんかじゃない」
「じゃあ、僕達男は何だと?」
「虫だよ」
その言葉に数人が反応しかけるものの、ギーシュが手で制すると静かになる。
議論をするなら相手の意見を途中で叩き潰して自分の意見をごり押しするのも相手を選べば有効手段だし、そもそも軍人の家系だって言うんだからその手段を選択してもおかしくは無いんだが、それだけ自分の意見に自信があるって事なのかもしれないな。
まぁ、これから先のギーシュの事を知っているだけに、贔屓目で見てる気がしないでもないが。
「虫ねぇ、じゃあ、女性が花だと?」
「いいや、女性は炎だよ、揺らめき燃え盛り愚かな虫を引き寄せては焼き尽くして取り込んでしまう」
「焼き尽くされるた結果待っているのは薔薇色の鎖か破滅か、かね?」
「その通り」
周りの男連中は付いてこれないのか付いて来る気が無いのか何となく感心しているかのどれかだが、それはともかくとして、周囲に居る女の子からの視線が痛い。
気にするほどの事ではないが。
「ところで、それだったら複数の炎の間を飛び回っている虫は何故無事なんだろうね?」
「それは簡単だ。 炎が燃えないように柔らかく包んでくれているか、虫が側まで近寄るだけで踏み込まないか、燃え尽きたのに時間をかけて蘇ったか、踏み込んでなお元気に飛び回れるほどに強いかのどれかだろう?」
「何と女性は偉大で、男は愚かなんだろうね、サイト?」
にこりと、“見慣れた”笑みを浮かべる。
そう、“見慣れた”笑みだ。
戦争を、戦いを経験する前の、あの軽薄と分類される笑みじゃない、笑み。
「……これは、我が主が迷惑をかけたと謝罪すべきかの、ギーシュよ?」
「何、子供の頃は知識と力が伴わずに苦労もしたが、慣れてしまえば悪くないものだよ、こう言う事もね」
ふむ、やはりルイズに関わった期間が長ければ長いほど不条理と言うか常識と無関係な結果をあっさりと受け入れる事が出来る様になるらしい。
例えば、何故か平行世界の経験と知識を合わせ持つ等と言う不条理が起きても、『まぁ、ルイズが関わってるっぽいから』の一言を思い浮かべれば欠片ほども動揺しなくなったりと言う嫌な受け入れ方なんだが。
普通こんな状況を楽しめる訳もないのだろうが、慣れと言う物は怖いものよ。
「これからの事など話すべき事は山ほどあるし、この身はほとんど鍛えられても居らぬ、更に言えばあやつが我の呼びかけに答えるかどうかも試して居らぬが……とりあえず、遊ばんか?」
今日の授業中や召喚儀式の際の反応から考えるに、何故かは知らんがギーシュは歴史をなぞろうとして見えるからの。
それに便乗して決闘も楽しかろう。
前回のように、我の無様な姿を晒すつもりは欠片ほども無いが。
「良いねぇ、遊ぼうか?」
「うむ、だが会場は如何する?」
「そんなもの、最初から決まってるだろ?」
「我等が懐かしきヴェストリの広場、か」
「その通り」
互いに笑みを交わし、周りが会話について行けずに呆然としているのも無視して軽く拳を打ち合わせて別れる。
理由は簡単。
俺の仕事が終わって居ないからだ、まだ。
「あ、あの、サイトさん、その、今の遊びって、貴族の方とお知り合い、なんですか?」
「それは私も興味あるわね、説明、してもらえる?」
シエスタが何故か不安そうに、ルイズが不満そうに立ち塞がって来た。
キュルケとタバサも側で聞き耳を立てているみたいなんだが、ギーシュが側の席を選んで座ったのか?
ま、どっちでも良い事だな。
「ギーシュとの関係を説明しなかった事を怒っているのか、ルイズ?」
「そうよ」
短い応答。
再会、正確には出会ってからまだ一日経ったか経たないか程度の時間しか経っていないんだが、俺に対する対応を身に付けつつあるな。
日常会話ではこんな会話をするつもりもさせるつもりも無いが、こう言った場面ならこれが俺に対する一番の対応の仕方だからな。
「十年くらい前に何度か会った事があるんだ。
お互い子供だったし、家に行って会ったとかじゃなかったからギーシュが俺を覚えているなんて思っていなかったんだよ」
さらっと嘘が出るようになったもんだよな、俺も。
普通の高校生でしかなかった我が、選んだ道によっては国政の中心に食い込んで政争に参加する事になるのだから。
つくづく我は常識と縁の薄い人生を送る事になるのだと思い知らされる。
まぁ、それを楽しいと思う感性を持っている時点で悩みでも何でもなくなるのだがな、その程度の事は。
……例え、その感性がある種の諦念の境地の果てに得たモノだとしても。
「それについてはそれで納得してあげるけど、遊びって?」
欠片ほども納得してなさそうだが、問い質すのを諦めた……って、顔でも無いな。
当たり障りの無い話に移行して、こっちが油断したところで追及でもするのか?
「決闘」
「は?」
「決闘ってあの、決闘です、か?」
「この場合は本来ならば互いの命をかけて行うあの決闘に決まって居ろう」
だからまぁ、こうやってストレートに俺がこれからする事を説明して混乱させてやる。
ルイズと、横で聞いてるキュルケとタバサの三人を混乱させる目的があるんだが、ついでにシエスタが混乱してその状況に拍車をかけているな。
や、周りで訳もわからず話に耳を傾けてた連中も同様だが、そこまで気にする必要も無い。
と、言うかほぼ無関係の連中の事まで気にしながら生きて行けるほど平穏な人生を送れる可能性は限りなくゼロ%に近いからな。
俺に、と言うか、ルイズに関わる以上は確実に。
「なっ、何考えてるのよ!?」
「そうですよ、貴族と決闘だなんて、そんな……」
「問題はあるまいて。
ギーシュも我を殺すような事はせんであろうし、我とてそうだ」
「メイジを相手にしてそんなの役に立つ訳が無いじゃない!?」
ふむ、まぁ、確かに魔法と言うものは加減をされても普通の平民は死ぬであろうから、この心配らしきものもあながち間違いではないがの。
「遊ぶと言う事はギーシュはゴーレムを使うだけであろうし、何よりも我の武器はある程度までなら魔法を無効に出来る故な。
これだけの条件が揃った上で殺す殺される等と言う事は起きんよ」
「……ホントに、大丈夫なんでしょうね」
「勿論だ」
まだ試しては居らぬから、その武器が手元に現れるかどうかは我にもわからぬがな。
「我はルイズ・ド・ラ・ヴァリエールが使い魔にして、愛する者達を守る守護者よ。
この地に我が字を知る者はギーシュ一人しか居らぬであろうが、守護者がこの程度のお遊びで死ぬ訳もなかろう?」
さて、話をしている間にほんとんどの生徒達は席を立ってしまったか。
これでは仕事にならんな。
「レディが見て楽しめるかどうかはわからぬが、我等が遊技場へご足労願いたい」
ケーキの乗ったトレイを脇に避け、一つ礼をして歩き出す。
「ああ、もうっ!! 何で好き勝手に動くのよ、私の使い魔のくせに!!」
俺の言葉で昨日の夜の事を思い出して固まっていたルイズは一声そう叫ぶと俺の後を追って歩き出し、同様に固まっていたシエスタも躊躇いながらも付いて来る。
キュルケとタバサの二人は何の躊躇いも無く、俺に気付かれているのを理解しているのか席を立ってすぐ俺を追いかけてきた。
「特別製の使い魔だからな、俺は」
立ち止まる事無く振り替えり、ただ事実だけを教えてやる。
特別製の使い魔、嘘は言っていない。
ま、本当に特別なのは、唯一その特別製の使い魔を呼び出す事の我が主なんだがな。
――トリステイン魔法学院・ヴェストリの広場――
前回はあの騒ぎを見ていた者達が我とギーシュのやりとりを見て決闘を楽しみに来ていたのだが、人の入りは前回とさほど変わらぬな。
決闘を娯楽か何かと勘違いしとるのか、こやつらは?
ま、決闘を遊びと言うて居る我等もまた、色々と間違えて居るのは確かだがの。
「諸君、決闘だ!!」
ギーシュが両手を広げ胸に挿した薔薇の造花を手に取り、錬金で生み出した花びらを周囲にまきながら叫ぶとそれに呼応するように周囲の者達が歓声をあげる。
この中の内何人が気付いているのかね。
ギーシュが空気中に塵の類を錬金で花びらに作りかえるなんて言う無駄に凄い事をしたと言う事実に。
はっきり言って学生云々以前に トライアングルメイジでもなければ出来ない領域の魔法なんだが、何故誰も疑問を抱かないのやら。
まぁ、タバサとかキュルケは何だか疑わしい顔で見ているが、目に見えて疑問を抱いているのはそれほどいないな。
ちなみに、魔力量で言えば確かにトライアングルメイジクラスの魔法だが、難易度で言えばスクウェアクラスの技量が必要だった気がするんだがな、この魔法。
いや、今は気にせずとも良いか。
疑問もあるが、それについての答えは後々示してくれる事だろう。
凶悪なトラップか何かの姿をもってして、な。
しかし、それにしてもなんだな。
我もギーシュも完璧に間違えて居るのであろう。
こう言うノリが楽しく仕方が無い。
「ギーシュが決闘するぞ、相手はルイズのとこのあの変なのだ!!」
自業自得と言う事は理解して居る。
理解してはいるが、変なの呼ばわりは勘弁して欲しいのだが。
「準備は良いかな、サイト?」
「ふん、人が施した下準備を意図的に台無しにしておいて何を言うか」
「別に君には必要ないだろ、身体能力強化の刻印なんてね」
刻印方術。
使えなくとも刻印とそれを使った結果を知って居れば、見ただけで我が何をしようとするのか理解されるのが問題点よな。
まぁ、何故か我が身に刻まれて居る刻印を利用すればどうとでもなるが、それに関してはギーシュにも知られて居る以上頼り切る訳にもいかぬ。
そもそも、威力があり過ぎて一対一の戦闘で身体能力強化等の補助以外は使いようがないから、頼るも何も無いんだがの。
「まだアイツを呼べるかどうかもわからんと言っておいたと言うに、お主がトラップをしかけてくるのはどう言う了見だ?」
「何、万全を期しても君に勝つ自身が無いだけだよ」
やるな、我がアイツを呼ぶ為の下準備をするのに時間を稼いでいるのを利用して、ギーシュもまた下準備を着々と進めて居るようだ。
幾人かは気付いて居るようだな、ギーシュがばら撒いた花びらに“何か”細工をしていると言う事に。
昨日召喚されたばかりで経験と肉体の差異を把握していない俺と、十六〜七年前から色々と新たな経験を重ねてきたギーシュ。
ギーシュはその十七年かそこらの間に重なった全てを統合し、己が身を記憶のそれにすり合わせ、更に鍛え上げ、その経験や知識を色々と研究して来たのだ。
流石に魔力量、精神力に関しては我の知って居る全盛期のギーシュには劣るであろうが、それ以外に関しては上回っている可能性がある。
油断は出来んなぁ。
「千里を越え、万里を越え、世界の境界、時の境界踏み越えて、我が手に来たれ、我が剣」
我ながら、半端にかっこつけようとして決めたみたいな詠唱だ。
自己暗示その他諸々の意味合いもあるし、何よりも昨日ルイズ達がしていた使い魔召喚の儀式と同等かそれ以上の事を実行するんだから、別に問題は無い。
そう思わないとやってられないってのもあるしな。
ただでさえ恥ずかしいのに、これで来なかったら羞恥の余り首をくくりたくなるかもしれぬ。
「汝は一つにして数多の形持ち、汝は重合する歪な存在にして一つの正しき存在」
詠唱を続けながら左腕の袖を引き上げ刻印を剥き出しにする。
使い魔のルーンとして一緒に刻み込まれたのだから、もしかしたら今までの刻印とは異なる使い方があるのかもしれない。
だが、例えそうであったとしてもまだ調べて無いから普段と同様にするしかない。
右手の親指を犬歯で噛み切り、ざっと左腕に視線を走らせて必要な刻印を血でなぞって行く。
「ここに我が心の力を捧げん」
詠唱と共に世界に干渉する為に必要な、基本となる刻印を血でなぞる。
意味は【放出】。
メイジが魔法を使うと言う事は、己が身体の内にある回路を通し精神力を世界に示して世界を改変する。
実際はそこに魔力云々やその存在する分子云々に関して細々とした話も関わって来るんだが、とりあえずは世界に己の意思を示す事が魔法やそれに類する作業の基本。
故に、己が身の内には存在せぬ回路を刻印で代用し、詠唱でそれを補正する。
「我が築くは一つの扉、万の意を持つ一つの扉」
【世界】・【時間】・【距離】。
その他数種の刻印を血でなぞり、【扉】の刻印と繋げて我の行いたい事を世に示す。
わかり易く言えば、これらの意を持つ扉を作るから手伝え、と世界にお願いしていると言う事だ。
ここら辺の解釈は人それぞれだからどうでも良い事だがな。
結果が出さえすれば、普通のメイジはそれで良いのだ。
我には、正確には刻印方術を使う者にはそれなりに重要な事。
故に我としての持論の様なモノは持ち合わせては居るのだが。
「彼の地、彼の時、彼の世界、繋ぎ、開き、呼び招く」
座標の指定等出来はしない。
時の指定、場所の指定にしても同じ事。
なればこそ、我は呼び招くのみ。
我がこの場に存在するように世界は数多存在し、彼の者もまた数多存在する。
本来ならば、最悪でも何も知らないルイズ達と同じく何も知らないこの世界のアイツがここに来るだろう。
その力のほとんどを封印し、ついでに言えばギーシュ、キュルケ、タバサ、アンリエッタ、ルイズ、ティファニア、ついでに我の六人で徹底的に施した改造の類も施して居ない本来の姿のアイツが。
尤も強い力を持つ【ヒラガサイト】が振るった時のそれと比べるべくもないモノかもしれぬが、それでもアイツだけが我が剣。
「来たれ、開け、全てを越えて我が手の内に現れよ」
詠唱に従い、扉が現れる。
空気に投影されるように実体を持たぬ扉が現れ、ゆっくりとそれが開かれる。
その隙間から見えるは万華鏡の世界。
ヴェストリの広場が、ゼロ戦の機内が、日本の俺の部屋が、トリステインの王城が、最後まで王であろうとした男の亡骸が横たわる礼拝堂が、何処とも知れぬ戦場が、そして俺とアイツが始めて出会ったあの武器屋が。
重なり、歪み、千変万化をしながらも確かにそこに繋がっている。
俺の相棒の居るそこに。
……平行世界云々は抜きにしても、まったく見覚えのない光景が存在していたりしなかったりするんだが、アレはなんだったのか。
「来い、デルフリンガー」
だが、そんな事は関係が無い。
最後の一押しを己が手で押し開き、呼び招く。
瞬間、光が周囲全てを多い尽くし、腕に懐かし……くない、重みが加わる。
「アレ?」
剣の柄を握ったような感触も無い。
これは、アレだ。
人間の、しかも女の子の身体の柔らかさだ。
トスッ、と言う軽い音と共に、何かが身体に倒れこんでくる。
当然抱きとめたが何と言うか、光のせいで使用不可能な視覚以外の全ての感覚が言っている。
コレはデルフリンガーじゃない、と。
そして、ゆっくりと光が収束し、戻ってきた視界に映ったのは。
俺の腕の中で心地よさそうに寝息を漏らす、何処と無くルイズの面影を持った美少女だった。
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あとがき
今日はARIAといぬのえいがを見た後に書いたですが、何と言うか、ARIAはほのぼのとしていて大好きです
サントラ、出たら買うんですが、今度調べてみましょうかね
それはそれとして、結局ギーシュと戦わせる事に
アレです、ギーシュだけがサイトと同じ状態になっている理由は私もまだ決めていません
表立ってはギーシュは動きませんがサポートとして動いてもらいます
とは言っても、ギーシュにどう動いてもらうかなんてまだ頭の中で組みあがってもいませんが
ただ原作状態のギーシュを使って話を作ってみたところ、ギーシュがまったく上手く動いてくれなかったんです
ギーシュでありながらギーシュでは無い存在、そんな人を作ってしまいました
サイトとギーシュは半ばオリキャラになっていますね、これ
ついでに、デルフリンガーもおかしな事に
それについては独自解釈諸々を加えた結果と思ってください
思いついたままに突っ走って暴走して迷走して途方に暮れるのも若さの特権と言う事で
……独自解釈って言葉も都合の良い言葉ですよねぇ
擬人化美少女云々ってお話は、二時創作では良く在る話の一言で済ませてしまうのが良いでしょう
一応私なりの設定がありますので、次回か次々回か、何時になるかはわかりませんがそれについては触れますので
とりあえず、デルフリンガーは剣で性別は存在しないのでTSはしないと言う言葉は守れました
以下は前回同様、レス返しですね
ヤバイ事をやってしまいました(爽
や、微妙に意味合いは違いますが、魔法と言うか刻印方術で呼び出してますし
一応説明は考えていますが、無茶ですよねぇ、これ
完璧に独自設定ですよ
Fateの英霊とは違います
ただ原作サイトの頭の中に知識と経験を持っている色々な『ヒラガサイト』が同居して融合したと言うだけです
何と説明すれば良いのか、上手い言葉が見つからないんですが
ま、数多の世界に存在する『ヒラガサイト』が経験と僅かな記憶と知識を持って逆行もしくは平行世界へ移動したとでも思ってください
=赤い弓兵になるんですかね、これって……微妙に違うような気はするんですが(悩
Fateはやりましたし、好きではあるんですが、英霊云々を完璧に理解出来るほどまでやりこんだり、情報調べこんだりしている訳でもないので上手く説明の言葉が思いつか無いもので
英霊と言われて思いつくのは、アーチャーは解析し、見た武器を内臓すると言う宝具の性質上記録としてではなく記憶として召喚された時の事を覚えているとか、セイバーは死の直前に生きたまま英霊となったので記憶は受け継がれるとか、そんな感じです
あ、これについてはFate思い出してそう言えばこんな文章があったかなって程度の事なので、間違いだったとしてもスルーしておいてください
突っ込まれても感心するぐらいの事しか出来ませんので
場合によっては反論もするかもしれませんが
一人称の使い分けは、一応してあるんです
力一杯わかり難いかもしれませんが
私なりに、なので疑問も覚えるかもしれませんが、それについてあとがきとかで説明してしまうのもどうかと思うので説明はしませんが、一応、使い分けてあるんです
それでは納得出来ないかもしれませんが、本当に申し訳ありませんとしか言えませんので
武器は何でもありますよ
ゼロ戦やロケットランチャーの使い方まで教えてくれるガンダールヴの刻印ですから
カイザーナックルとかはめて具足でも履けば打撃に関しては完璧な知識を与えてくれる事でしょう
……投げ技とか間接技がどうなるのか興味深いと思ってしまったりするんですが
名前は忘れましたが、鉄扇片手に昔の土木関係の荒くれと分類される方々の大人数による喧嘩を一人で鎮圧してのけた会津の小天狗とか呼ばれた人の使った合気柔術とか、色々とありますからね
ちなみに、これは『ネギま』を読んでる人なら知ってるかもですが、武術大会でエヴァが言って居る「チンチクリンのおっさんから習った」とか言っているチンチクリンおっさんの事です
や、ホントは物凄い人だったらしいんですけどね
あ、話はそれましたが、まぁ、とにかく、こう言う小道具を用いてそう言う業をサイトが使っても面白いかなぁと思ったのですよ
ですので、カイザーナックルとか鉄扇とか、使うかもしれません
今は、誰を相手にそんなモノを使うのかなんて考えてもいません
と、言うか何時か使います、きっと
……ただ、『ゼロの使い魔』って何気に戦闘シーンの半分くらいが本気の殺し合いなんですよね
結局ほとんど死んでませんが、相手はこっち殺す気でかかってくるのがほとんどで、殺し合いを主目的としていない戦いってこの対ギーシュ戦とラ・ロシェールでやってたワルドとの決闘ぐらいなんですよね
そう言えば、原作ではサイト、何気なくゼロ戦で敵撃ち殺したりしてますし
敵を殴り殺すとか言う選択肢もありますが、刃物で刺したり斬ったりした方が早いですから
認識をひっくり返す云々の前にどうやって決闘に持っていくのかが問題になってしまいました
とりあえず、デルフリンガーで悶着が起きるのはこの時点で確定していますが、どうやって決着がつくのか
周囲の認識はさらに凄い事になりそうな予感はしています
今回は少々送れましたが、問題を次の話に移行してしまったので次回はもう少し時間がかかるかもしれません
どれだけ遅れようとも書き始めた以上は投げ出す事だけはしないので、どうか生暖かい目で見守ってやってください
今回は、これにて
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