午前四時――四代目火影邸――
「……よし、誰も襲ってない」
寝起きの一言がこれってのもどうなんだ?
だけど、状況を考えればそれも仕方ないだろ。
右手にハナさん、左手に紅さん、右足にヒナタ、左足にハナビ、足が開かれてその間に収まって胴にしがみついているアヤメさん、頬擦りするみたいに頬をぴったりとくっつけて抱きついているテンテン。
ハナビはともかくとして、アヤメさんとハナさんと紅さんはもちろん、テンテンとヒナタって実はもう結構女の体してるからなぁ。
良く我慢した、俺。
それはそれとして、現在進行形で存在している問題が二つ。
身動き出来ない事と、
「は、離せっ、娘が、娘達がっ!!!!」
白眼使って俺を攻撃しようとして、数人がかりで取り押さえられてる日向一族宗家だ。
あの人の事だ、俺に抱き付いてる女の子を器用に避けて俺だけを狙って正確無比な八卦六十四掌とか打ち込んでくるぞ、きっと?
俺が横になってるのにどうやってとか、そう言う皆が常識的に抱くであろう疑問を『娘を持つ親の一念』何て言う意味不明な理由でねじ伏せて。
「ナルト、起きれんか?」
「手荒に扱えば可能だけど、それをやったらやったで絶対に暴れるから、ヒアシさん」
「まぁ、そうじゃろうなぁ」
実際、ハナビvsヒナタ=巨乳vs貧乳大戦の時は二人が勝手に喧嘩してたのに、理由はどうあれ二人が怪我したからってネジとヒアシさんに襲われたからな。
今はまだネジが参戦してないし大蛇丸の襲撃前だから修練のレベルが落ちていて全盛期レベルと言う訳でもないから、多少面倒ってだけでどうとでもなるんだが。
「とりあえず、落ち着いたらどうだ、御義父さん?」
「っ、私を御義父さんと呼ぶなぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」
「おお、さすが木の葉一の親馬鹿、微妙なニュアンスの違いを読み取った」
「……どっちかと言うと、御父さんって単語に反応しただけに見えるけどねぇ」
カカシ先生も認めてるんだ、里一番の親馬鹿ってとこは。
昔聞いた話だと紅さんはもちろん、ヒナタとハナビも気付いてなかったって話だから、昔馴染みにだけ見せる本性って感じなんだな。
「カカシ先生、そう言えば何人か見えないけど、何処に?」
「ん、ネジはヒアシさんの暴走とヒナタ達の様子を見てどっかに泣きながら逃げてったし、リーはガイと一緒に真っ赤になって『青春だ!!』とか叫びながらどこかに走り去って行った。
キバは『こんなの姉ちゃんじゃねぇ!!』とか絶叫して赤丸と一緒に行方不明でな、ツメさんが探しにいってる」
破壊力抜群だな、この状態。
五人の忍にそれなり以上のダメージを与える事に成功してる。
いや、まぁ、身内と言うか、里の人間にしかこの破壊力を発揮出来ないんだが。
「……それで、微妙に皆の抱く力が強くなって来たせいか血流が弱まって痺れたり眩暈がし始めてたりするんだけど、助けてカカシ先生」
「ん、無理」
即答。
それはもう、とても潔い即答。
「ああ、チョウザさんの作る朝ご飯の良い匂いがする」
「現実逃避はほどほどにね」
「……了解」
だが、この現状で俺にどうしろと?
「あ〜、それにしても、親がこの場に入るヒナタ達は良いけど、テンテン達の両親はこの状況知ったらどうするかな?」
「ん〜、話で聞いただけだけど、サクラの親以外はたぶん大丈夫だろうなぁ。
テンテンとリーの両親に関してはそこら辺の事を気にしてないって話は聞いてるし、それに何か言って来たらアレだ」
「アレ?」
「火影の名前はこう言う時にも使える、と言う事じゃ」
俺の憧れた火影の名がこんなところで使えるとか言われても。
「ところでナルト、気付いてるか?」
「何に?」
「いや、角度によってはテンテンにキスを迫ってるように見える」
いや、まぁ、確かに、無意識に顔を横に背けてて、ちょうどそっちにテンテンの顔があるけど。
わざわざ言わなくても……って、殺気!?
「あ、えっと、サクラちゃんといの?」
ついでにサスケもだが、何故そんなごっつい殺気を放つ?
俺が何か悪い事でもしたか、この時期は恋愛感情云々なんてまだ育めて無いはずだぞ!?
ああ、いや、もしかして、アレか。
寝ている女の子に無理矢理キスを迫ってるように見えるのが問題なのか?
前の話か帰って来た後に聞いた話かは忘れたけど。
忍だろうと侍だろうと大名家の姫様だろうと乙女のファーストキスは黄金で作った城よりも価値があるとか、それを無理に奪おうとする者には万死を与えるに限るとか言う不穏当な事を言われてたけど、アレか?
現状、奪おうとしてるように見えるから、それで怒ってるのか?
サスケが怒ってる理由はわからないが、自分が奪われた時の事でも想像したのかもしれないな。
無理矢理キスを迫って脅迫したりプライドを傷つけただけで恋愛関係が築ける訳も無いだろうし、そう言う理由では怒って無いだろう。
そう言う理由だったらそれはそれで嬉しいんだが、まだまだ無理だよな。
「カカシ先生、助けて」
「ゴメン、無理」
謝罪が入ってちょっと長くなったが、やっぱり即答された。
それはそうだよなぁ。
だって、もう、なんて言うか、修羅が居るから。
「遺言、聞いておこうか?」
「男の夢、ハーレムを必ず!!」
「そうか、逝って来い」
何がどうなったのか不明だが、俺にしがみついてる面々が離れないからと言う事でアカデミー卒業直後だと言うのにアカデミー時代じゃあ考えられない精密さで俺だけに千本を突き刺しまくってくれた。
何とか玉藻の力と気合で急所だけは避けて、無事に生き延びる事に成功したな。
本当にギリギリのところで。
この状態を無事と言って良いのかどうか、我が事ながら甚だ疑問ではあるが。
午前六時――四代目火影邸――
声を押し殺していたとは言ってもビクビクと時折ヤバイ感じで痙攣したり、小さいながらも呻き声とか悲鳴とかを上げたんだが俺にしがみついてる面々は誰一人として目を覚ます事無く、二時間が経過した。
何か、サクラといのの行動が、途中から俺のわき腹をくすぐったり、見た目は大した事は無くても激痛が走る秘孔――父さんの書斎から人体についてかかれた書を持ち出してきて調べたらしい――をついたり、俺にどうやって声を出させるかの争いになっていたのはきっと気のせいだろう。
俺が苦痛に耐えてる表情とか、耐えきれずに時折漏れる吐息みたいな苦痛の声を聞いている内にサクラといの……ついでに何故か横で凝視していたサスケ達の顔がうっすらと紅潮して、呼吸が荒くなっていたのはきっと気のせいだ。
俺には苛められる趣味は無いんだ。
どうせなら苛める方が良い。
まぁ、それは無理にでも忘れるとして、その後は別の意味で大変だった。
まず、目を覚ましたヒナタとハナビが現状を理解した瞬間に気絶した。
次いで目を覚ました紅さんとハナさんはヒナタ達より酒に強いのか昨日の晩の行動を覚えていて、幻術その他諸々を使って俺の記憶を奪おうと軽く死闘に近い戦いを行った。
ちなみに、諸々の内容の中には物理的衝撃による記憶の削除も含まれていたんだが、普通はそんなもので消えないだろう。
で、テンテンは自分の状態に気付き硬直。
通常状態に戻ったサクラといのの手によって日向姉妹と一緒に脇に避けられ、戦闘を開始した。
何がどうなったかと言うと、
「無駄にチャクラ使ったから朝から疲れた」
こう言う事だ。
「しかし、九尾のチャクラも使えるとはの」
「ん、言わなかったっけ。
玉藻とは和解して、封印抜きにして契約してるって」
「……聞いとらんぞ、それは」
言ったつもりだったけど父さんの家で暮らせるってわかって伝える必要があったのに忘れてたか、もしかして?
それはそれとして。
今はヒナタ達が居るのに玉藻の事を口外したら厳罰に処すって掟を自分で破ってるような気がするんだが、もう言っても良いと判断したのか?
忘れてるだけって可能性が濃厚な気がするのは、やっぱり酒臭いからか?
「玉藻と直で契約結んだから、短時間に限られるけど封印の隙間から漏れ出るチャクラだけじゃなくて九尾の妖狐と同等のチャクラを使い放題」
「何と言うか、ワシらの常識が紙の様に吹き飛んで行くのぉ」
火影のじいちゃんは何とか立ち直ってるけど、大人連中は見事に固まってるな。
同期の面々は会話の内容に付いて行けないって理由で固まってるけど、玉藻の名前が出て来たんだから話題の内容ぐらい掴めそうなもんだと思うんだが。
理解したくないからスルーしてるとかか?
あ、もしかしたら色んな意味で顔を紅くして考え込んでる面々は別として、朝食の席になって改めて冷静になったってのもありえる事だよな。
三代目火影、その側近のご意見番、里一番の実力者の写輪眼のカカシ、さらには木の葉の里で有数の血継限界を伝える日向家宗主、そしてそれぞれ里でも名の知られている秘伝忍術を代々伝える名家と呼ばれる家の党首達。
前での付き合いがあるし元々そう言うの気にしない性質だから気にも留めてなかったけど、普通なら萎縮する理由満載だよ。
普通に生活してたら里長の火影のじいちゃんと朝食を共にする機会なんてないもんな。
救いとしてはそれぞれの家の子供が居る事と、昨日の夜の醜態を覚えてる事か。
……逆にそれをばらしたら後でどんな目にあうのかわからないってのも恐怖を誘ってるのかもしれないな、誰も昨日の事には触れないから余計に怖いのか。
「サクラちゃんとかヒナタの常識も結構吹き飛んだと思うけど」
「む、それは、まぁ、アレじゃ。
皆久方ぶりにこの家で飲んだからのぉ」
「ハメ、外し過ぎましたねぇ」
目をそらしながら言う火影のじいちゃんと、しみじみと同意するシカクさん。
やり過ぎたとやっと自覚したっぽいな、火影のじいちゃん“だけ”は。
「……迎え酒はどうだ?」
「いや、シビさん、それはダメだから」
「そうか」
シビさん、そんな傍目にはわからない程度に残念そうな顔しないでください。
シノ、お前は何で傍目にはわからない程度に満足そうな顔して、微妙に頷いてる?
シビさんってそんなに酒癖悪かったり、大量に飲んでた印象は無いんだが。
「ところで今日は忍務入って無いの、皆?」
「ワシ等は普段からやる事やっとるし数ヶ月ぶりの休暇じゃからな、緊急性の高い事件やその兆候が見えん限りは今日は丸々……休める」
ご意見番の二人に目線で問うて確認をしてるが、やっぱりご意見番の方が上なのか?
火影のじいちゃんはエロだからダメなのか?
そう言えば、初代と二代目はどうか知らないけど、俺の知ってる火影って皆どこかしら問題持ってるな。
三代目のじいちゃんしかり、綱手母さんしかり、木ノ葉丸しかり、父さんしかり。
エロ、ギャンブル狂、天然、笑顔のS。
戦闘能力に関しては別としても、やっぱり脇を固める面々が凄いんだろうな、きっと。
「七班は無いよ、やりたいなら修行に付き合うぐらいするけど」
……何か、カカシ先生が妙にやる気になってるように見えるな。
昨日の晩の変化して言った一言が効いてるのかもしれない。
「じゃ、カカシ先生はサスケに、サクラちゃんには火影のじいちゃん巻き込んで二人がかりで無意味なまでに完璧なチャクラコントロールを教え込んでみようか」
中忍試験に向けてと言うよりも、大蛇丸の暴走に向けての修行は必要だからな。
綱手母さんの弟子になるにしても、最低限の実力はつけておいた方がその後の成長も顕著になる。
家捜しすれば父さんが使ったって言う時空間忍術の研究に使っていた書とかが見つかるかもしれないし、この家でゴロゴロしてみたくない訳でもない。
正直に言えばゴロゴロとして暇を潰すのも悪くないかな〜、とか思わなくもなくはない。
けど、周りの面々が死に難くなるならそれにこした事は無いよな。
「ちょ、なんでアンタに教わんなきゃなんないのよ!?」
「じゃ、火影のじいちゃん、がんば」
「む、ワシだけか?」
「そ、伝説の三忍を育て上げた手腕を今ここに再現、って事で」
「ふむ、それもまた面白そうじゃな、やってみるとしようか」
「え、ええっ、な、何でそう言う流れになるの!?」
「「……面白そうだから?」」
流石火影のじいちゃん、一瞬のアイコンタクトで意見が一致した。
ま、最初から俺の考えを読まれてるんだろうけどね。
「あ、だ、だったら、私もお願いします!!」
「私も!!」
で、やっぱそうなるよな、普通は。
「……よし、下手に忍務につかせるよりは修行になるな、こりゃ。
シカマル、チョウジ、お前らも行け」
「マジ?」
「マジだ」
で、その横ではアスマさんとシカマルがそんなやりとりをしている。
チョウジはアレだ、場を無視して食事に夢中。
ハナさんは班で来てる訳じゃないし、アヤメさんとテウチのおっちゃんは仕事があるだろう。
木ノ葉丸に関してはまだアカデミーに入ってないから、火影のじいちゃんに教わるか放っておいても何処からともなくエビスさんが参上するだろう。
で、会話に参加して無いけど、ヒナタとハナビはどうすんだ?
「ヒナタ、ハナビ、二人はナルト君に教わってみなさい」
「え、あの、ど、どうして、です、か?」
「「……やっぱり、面白そうだから?」」
やるな、ヒアシさん。
ここで通じ合えるとは。
今朝は中々凄い事になっていたのに。
「でも、ナルトに教わるって何が出来んだよ、お前?」
やっぱりキバはストレートだな、俺の立場が変わってもそこは変わらない。
「ん〜、とりあえずこの里で作られた忍術全部と霧と雨隠れと砂の忍術を幾つかずつ、チャクラコントロールも結構凄いぞ」
言うだけじゃ胡散臭いだろうからな、螺旋丸でも作ってみせるか。
「チャクラの流れが見える白眼の使い手なら、こう言うチャクラコントロールが必要な忍術覚えれば他の技量も上がるだろ」
「ほぉ、それを教えるか」
「俺の立場を考えれば、もってこいだと思わない?」
笑いながらゆっくりと螺旋丸を散らして行く。
昔、調子に乗って人にやって見せて物とか人にぶつけて消す訳にもいかないからってチャクラのコントロールを止めて消滅させたら凄まじい風が起きたんだよなぁ。
アレはアレで使えるんだけどちょっと細工を施さなきゃ自爆技にもなりはしないし、そもそも今そんな事やったら秋道親子が激怒しそうだ。
「ナルトくん、今の……いったい?」
「ん、螺旋丸って言う四代目火影が生み出した会得難易度Aクラスの超高等忍術」
「ちなみに四代目はこの術を編み出すのに三年の歳月を費やした術じゃからな、普通下忍に教える類の術ではないの」
「ま、柔拳の基本が掌からチャクラ放出してそれで敵のチャクラの流れ分断したりするんだから、チャクラの放出と目的の箇所にチャクラをたたき込まなきゃいけないって事でチャクラの操作は基本。
チャクラ操作の基本はやっぱ他の家よりは徹底的にやってるだろ?」
「う、うん、そう、だけど、詳しいんだね、ナルトくん」
「いや、柔拳と同じ事、ある程度までなら勉強しときゃ出来るし」
「……え?」
おお、ヒナタが固まった。
ついでにハナビも。
同期の連中もシカマルを残して意味がわからないって顔してるけど、残りの大人達はさほど驚いても居ない。
まぁ、実際に出来るのを知っている以上はさほど驚かなくても当然だけど。
「ど、どうやって!?」
「医療忍術とかに使う全身の経絡その他の位置を丸暗記して、実際に人体で試して身長、体重、脂肪や筋肉の付き方その他諸々でどんな違いがあるのか理解した上で大まかな予測を立ててチャクラを叩き込んで見て、その結果の差異で誤差を修正すれば立派な柔拳だ」
「その微妙な誤差を修正するには才能と呼ばれるモノか、圧倒的な経験が必要なんじゃがな」
確かに覚えるのには苦労した。
同期の皆を練習台にして、綱手母さんにも協力求めて、シズネさんに夜実地で教わったり捕虜で実験したりしたし、戦闘中も時間とかに余裕がある時にやってみたりしてやっと覚えたからなぁ、俺も。
覚えようとして改めて白眼の凄さを理解させられたな、アレは。
自分がどれだけ血継限界を甘く見ていたのかも、改めて理解させられた。
「それはそれとして、螺旋丸って白眼との相性良さそうだし」
「……そうじゃな、チャクラの流れを目視出来る白眼の持ち主にはもってこいの技かもしれんな」
「って事なんだけど、ヒアシさん、木登りとか水面歩行とかはもうやったの?」
「まだだ。 ハナビはまだチャクラが足りていないし、ヒナタは基本の体術の覚えが悪くてそこまで進んでは居ない」
そう言えばそうか。
ヒナタは宗家を継ぐには値しないって扱い受けてたのも、ハナビが今五〜六歳だって事も忘れてたよ。
「あ〜、じゃ、まだ螺旋丸は無理か」
「確かにそうじゃな、ナルトの中に九尾が居る事を力一杯忘れとった」
ふむ、その発言はある意味凄いぞ火影のじいちゃん。
場合によっちゃ叩きのめされるぞ?
……具体的に誰がそれをするかと言えば、俺の腹の中に居る本人とかが。
「あの、うずまき、さん?」
「ナルトで良いけど、どした、ハナビ?」
うずまきって呼ばれるの初めてじゃないか、もしかして?
基本がナルトで、それ以外じゃあ狐神で済ませられてたからなぁ。
怯えられるからって事で俺は上から仕事もらってそれを済ませるだけで、人との接触もそう多くは無かったし。
っと、別にそこら辺はどうでも良い事だな。
「九尾が中に居る、と言うのはどう言う意味、なんですか?」
「ん、父さんが俺の身体を媒体にして九尾の妖狐を封印して、今現在も俺の体内に九尾の妖狐が居るって意味だ」
「何で、そんな……」
さて、これはどう言う反応だろう?
里の英雄がその息子を人身御供みたいに扱ったのが信じられないのか、俺が冗談みたいにあっさりと説明するのが信じられないのか。
それとも、滅ぼしたんじゃなく封じたって言う話が信じられないのか。
「殺せなかったから。
何処かに封印でもしなきゃダメだったから。
とりあえず封印するしかないって事で、俺の中に封印したんだ」
「でもよ、何で四代目の息子だってのにそんな事されて、里で白い眼で見られてんだよ、オマエ?」
「ん〜、里の人間にとっちゃ俺は四代目の息子じゃなくて九尾の妖狐の生まれ変わりって事らしくてな、今ここに居る人達と一部の人間を残して俺はバケモノって事らしい」
「なっ、何でそうなるのよ!?」
「何でって、一部の連中は四代目火影の財産全部没収する口実を作りたかったんだろうし、残りの連中にしてみれば自分の親とか兄弟とか友達が死んだ結果が滅ぼされたんじゃなく封印されてここに居るんだ、八つ当たりの一つもしたくなったんだろ」
サクラの言葉に対する答えもすらりと口から出て来た。
心の底からそう思えているって事だよな、これは。
昔は憤りとかもあったけど慣れちゃったし、何よりもじいちゃん達が居るから他の連中にどう思われたところでどうって事は無い。
「あんた、それで良いの?」
「今更だな。
十二年そうして生きてきたんだし、これから先の人生をそう過ごしても別にどうって事は無い。
俺を九尾の妖狐とか九尾の器としてじゃなく、うずまきナルトとして見てくれる人間がこれだけ居るんだから、十分ってもんだろ?」
いのの言葉にも、笑いながら答える。
食後のお茶を啜っている火影のじいちゃん。
どうやって食べたのか何時か絶対に問いただしてみたいカカシ先生。
俺の言葉に顔を綻ばせながらもどこか心苦しそうな顔をしているヒアシさん。
俺を気遣って何か言おうとしても言えずに居るヒナタ。
他の皆もそうだ、俺を俺として見てくれる皆が居る。
それで十分。
……ま、最低でも後二〜三人はどうやってでも増やすつもりでは居るが、それはそれ。
「さ、こんな暗くなりそうな話はちゃっちゃと切り上げて、はじめるとしますか、修行」
「うむ、そうじゃな」
「じゃ、皆さっさと庭に来いよ〜」
そう言って俺を含めた大人達が全員居間を出て行く。
俺の心情を思いやっての行動だとわかるから、嬉しくて仕方が無い。
やっぱ、アレだな。
暗い話しと言うか、重い話をした後は力一杯身体を動かすべきだ。
下手にしんみりするよりよっぽど気が楽になる。
----------------------------------------------------------------------------------
あとがき
蛍の墓と、ARIAを見た後にこの話を書いたんですが
ふと思います、私はどれだけ汚れているんだろう、と
いや、もう、何と言うか、涙腺とか緩みそうになって大変でした
ああ言う話を目にし、耳にすると、アレです
対抗意識を燃やすとかそう言う訳でもないんですが、自分でもそう言う話が書けないだろうかと思案しています
無い物ねだりだって事はわかっているんですけどね、一応は
ふと思っちゃうんですよ
心の底から物語を生み出す想像力と、それを人に伝える文才が欲しい、と
……まぁ、気楽にこう言う話を書くのも好きですが
さて、前置きはともかく、今回は半分は遊びで、残りの半分でナルトの事情を子供達に教えてみました
木ノ葉丸が一言も話して居ない理由は場の雰囲気に飲まれたって言うのと、早朝に見たサクラといのとナルトに公開SMショーもどきを見て怯えているからと言う事で
九尾云々の話しに付いては次話で語るかもしれませんし、このまま修行に移行するかもしれません
とりあえず、しばらくは『木ノ葉下忍一同レベルアップの巻』が続くかと思います
パワーインフレは恐ろしいですからレベルアップすると言っても中忍試験までに水上歩行前後まで進んで、早い奴はある程度の中忍とか上忍レベルの忍術とかを学び始めるってくらいで
……それも早過ぎますかねぇ
とりあえず、カカシ先生がカブトに辛勝とは言え勝利出来るレベルまで復調と言うべきか、強くなってもらう予定はあったりしますが
このペースだと余裕で勝利しそうな気もします
ちなみに、以下はArcadiaに投稿した際、頂いた感想に対する答えです
保管していた感想は前使っていたパソと共に冥府へ旅立ってしまったので意味不明かもしれませんが、一部残しておきます
一応、前話を読んでいれば何となく何を言いたいのかわかっていただけるかもしれないので
ハーレムと言うよりも、酔っ払いと酔っ払いに絡まれてる人と言う情景になっていたりなっていなかったりするのですが
どちらかと言うと、今回の話の序盤の方がハーレムっぽい空気を出せたかもなのですよ
ただ問題は、サクラといのが怒った理由は嫉妬ではなく『乙女としての怒り』なんですが、それでやりすぎたような気がしないでも無いんですよね
まぁ、直す気はないのでそのまま行くつもりですが
前へ 戻る 次へ