――屋上――
「あ〜、そうだ、自己紹介、してくれない?」
「何を言えば良いんですか?」
「そりゃあ好きなもの嫌いなもの、将来の夢とか趣味とか……ま、そんなもんだ」
まぁ、確かに自己紹介って言ったらそんな感じだよな。
これが中忍とか上忍とかになったら得意な忍術とか、最低限仲間として行動するのに必要な情報を得る必要も加わるだろうけど。
忍の技は秘すべきだとか言って自分の得意忍術教えてくれなかった奴が前の時に居たけど、味方に情報隠匿してもしもの時はどうするつもりだったんだ?
そんなんだからあっさりと死んじゃったらしいけどな、別の任務についてる時に。
「まず先生からしてくれませんか……見た目ちょっと怪しいから」
サクラ、前の時も思ったけど、はっきり言って自分の上司にその言葉はどうかと思うぞ?
そもそも、有名になってしまった忍が自分の素顔とか隠すのは当然なんだから、多少怪しくても仕方がないだろう。
……いや、ガイさんとかリーとか背中に賭の一文字背負った火影とか街中でも平気で巨大な蛙を口寄せする白髪の巨漢とか、有名になったとしても無意味に目立ち続けてる人もたまには居るけど、避けるのが普通なんだぞ?
必要の無い注目を集める意味なんて欠片ほども無いんだから。
「あ、オレか?
オレは『はたけ・カカシ』って名前で、好き嫌いをお前らに教えるつもりは無い!!
将来の夢……って言われてもなぁ。
ま、趣味は色々って事だ!!」
情報隠匿が目的なのかただ単にそう言うタイプの人間なのか非常に気になるんだけど、結局秘密で押し通されたんだよなぁカカシ先生の上司になった後も。
とりあえず、他人が傷つくくらいなら自分が血に塗れた方が良いってタイプの人間だって事は理解してるから、そこら辺は気にならないけど。
「ねぇ、結局わかったのってさ、名前だけじゃない?」
「確かにね」
ちなみに、後々判明した先生の本当の趣味の一つは他人の恋愛に口挟んで見事に成就させる事だったりするんだよなぁ。
……いや、おかげで何度か修羅場体験したけど、この人の縁結びは洒落にならない手段をとったりするから油断出来ないんだよ。
それはもう、物凄く。
「じゃ、次はお前らだ、右から順にな」
「俺はうずまきナルト(それにしてもうずまきって特殊に過ぎると思うんだが、腹にある玉藻の封印式見て思いついたのか?)。
好きなものはイルカ先生に奢ってもらう一楽のラーメン、もっと好きなのは大切な人とする食事(たまに修羅場の空気が流れるけど、あの食卓を経験しちゃうと一人で何か食べるって気にならない)。
嫌いなものは一人の食事で、将来の夢は……火影を越す(俺が火影になるのは無理だって事は証明されちゃったから)。
そして、俺を知る全ての人を護る剣になる(里の全員に存在を認めさせるとか言っても、玉藻の力が強いから強くなったとか言う認識されちゃったし、そこは諦めるしかないだろ)」
剣ならば敵を斬り払い刀身が刃毀れするのを気にしなければ護る事も出来るし、腹で打てば殺さずに済む。
……ま、簡単に言えば自分の望んだ行動をするって事だな。
状況に流されて殺すしかない、殺す事が出来ない、護る事が出来ない、なんて状況を作らないようにって事だ。
カカシ先生なら俺の本質見抜く目くらいは持ってるだろうから、その点の心配って実はしてないけど。
「趣味は……料理とかケーキ作りとか、かな?」
昔はここでイタズラって答えたんだけど、イタズラが趣味ってある意味精神的に病んでたんじゃないだろうか、昔の俺って。
特技イタズラとか言うよりはまともかもしれないけど、趣味って公言すべきものでもないよなぁ。
あ、カカシ先生が何かビックリしてる。
いや、まぁ、三日前後で性格が一変したって言ってるのと同じだからな、俺が言ってる事って。
そもそも、うちにはまともな調理器具どころか調味料も無いのに趣味料理とかケーキ作りとか言っても嘘臭いか。
今日持ってきたケーキを食べて、俺の入れた紅茶を飲んで本気で驚いてたし。
「じゃあ、次」
「名はうちはサスケ、嫌いなものならたくさんあるが好きなものは別に無い」
そんな事を言ってるから食生活に偏りが出て肌が荒れたりするんだ。
肌荒れする様な食生活を送ってたら身体にも良くないし。
「それから……夢なんて言葉で終らせるつもりは無いが、野望はある。
一族の復興と、ある男を必ず……殺す事だ」
一族の復興って、何人子供産むつもりなんだろう、サスケは?
それと、ある男を殺すつもりだって所で何で俺に殺気が突き刺さるんだ?
そんなにファーストキスを奪われて、玩具にされた事がショックだったのか?
「よし、じゃあ最後、女の子」
「私は春野サクラ。
好きなものはぁ、って言うかぁ、好きな人は……」
前の時はサスケも照れてるのかと思ったんだけど、困ってるんだな、この顔は。
いや、男にファーストキス奪われた直後に色々と暴露されかけたりして精神的にダメージを受けている所に同性からのあからさまな告白。
ダメージが無い訳がないか。
「えーとぉ、将来の夢も言っちゃおうかなぁ…………キャーーーーー!!!
嫌いなものナルトです」
サクラ……この当時は両親の影響受けて俺を嫌ってるのは仕方が無いとして、その前の発言は力一杯痛い人だぞ?
場合によっては救急車呼ばれてもおかしくないタイプに分類されるぞ?
……そう言えば、前の時はこの直前にサスケに『うざい』とかきっぱり言われてたらしいんだが、良い根性してるな、サクラって。
今回も同じ事が起きたかどうかは知らないけどな
「ん、よし!
自己紹介はそこまで、明日から任務やるぞ」
「先生、どんな任務なんですか?」
「まずは四人だけである事をやるんだ」
サバイバル演習、か。
全力出してサスケとサクラのプライドとか過信とか、完膚なきまでに潰しちゃおうかな、とりあえず。
ただ、そうなったらカカシ先生から質問と言う名の尋問を受けそうだし、どう動こうかな?
「何ですか?」
「サバイバル演習だ」
「何で任務で演習なんてやるのよ?
演習ならアカデミーで散々やったわ!」
いや、普通に考えてみろ。
分身の術が出来たからはい下忍って、そんな訳ないのわからないのか?
……前の俺はわからなかったけどさ。
サクラが代わりに聞いてくれてるだけで良いけどアレだ、演習の内容からその目的まで全部わかっていると口を挟む余地が無いな。
「相手はオレだが、ただの演習じゃない」
「ただの演習じゃ、無い?」
「……ククク……」
「ちょっと!
何がおかしいのよ、先生」
俺としては妖しい笑い方だとツッコミを入れたいんだが、無粋か?
「いや、ただな、オレがコレを言ったらお前ら、絶対引くから」
「引くって?」
「卒業生27名中下忍と認められる者は僅か9名、残り十八名はアカデミーへ戻される。
この演習は脱落率66%以上の超難関試験だ!!」
俺はこの言葉を聞いて何で驚いたんだろう?
後になって思い返してみると卒業したはずなのに卒業試験の次の週にはアカデミーに戻ってきてる奴って何人か見てたし、会ってるんだよな俺。
この超難関試験の脱落者に。
「ん、ナルトは驚いてないみたいだな?」
「いや、だって俺卒業試験に三回連続で脱落してるんだから、卒業試験クリアしたはずなのにアカデミーで一緒に授業受けてた奴って何人か居るから」
「つまらないぞ、お前」
「ん〜、やっぱり二人の不安を煽る為に一緒に驚いた方が良かったかな?」
「お前って芝居上手そうだし、そうした方が面白かったと思うよ」
「ん、次似た様な事があったら注意してみる」
「って、何でそんなに冷静なのよ!?」
「いや、本気の俺は強いから」
カカシ先生と術比べをしてみせろとか言われたら、この身体のせいで勝つのは難しいだろうけど、簡単に負けるつもりはない。
チャクラ=細胞から取り出すエネルギー+精神エネルギーだからな。
精神の方に幾ら余力があっても肉体エネルギーの方は限界があるから、ちょっと難しい。
それにしても、精神エネルギーの方が有り余ってるんで多少の無茶は効くけど。
「ハァ? 何よそれ?」
「明日になればわかるさ」
ニヤリと、例の如く『悪魔の微笑』を見せてやると二人は固まり、何故かカカシ先生は真っ青になって小刻みに震えだした。
「い、イヤダァ、せ、先生、そ、それは、それだけは勘弁してください!!」
……あ〜、そう言えば、初めてこの笑顔を見せた時、父さんの事を知ってる人は似た様な反応してたっけ。
どうやらカカシ先生のトラウマを直撃しちゃったらしい。
「そ、それにしても、この試験で合否が決まるんだったら、アカデミーの卒業試験って、なんなの?」
おお、話題転換を狙うとはやるな、サクラ。
あらぬ方向に視線を向け冷や汗流しながらじゃなかったら完璧だが、今回はコレで十分だとしてあげよう。
「ん〜、分身の術使えたら下忍になれるかもしれないって事で、可能性の有無を判別しただけ。 簡単に言えば足切りだな」
「へ?」
「いや、だって、分身の術を使えたから卒業なんて言ってたら日向家とか奈良家とかの子供から忍術叩き込まれてる生粋の忍の家の子はアカデミー入学と同時に卒業出来たりするぞ?」
実際、俺みたいに学校に入って忍術を始めて学びましたって奴の方が少ないだろうし。
「……言われてみれば、そうかも」
「とッ、とに、とにかく、明日演習場でお前らの合否を判断するから、忍び道具一式持って来い。
それと、朝飯は抜いて来る事、でないと……吐くぞ」
「吐くってそんなにキツイの!?」
任務内容によっては精神的重圧だけで吐く事もあるんだから、多少激しい運動した程度で吐いてたら忍者なんて務まらないと思うんだが。
サクラのこの反応はどうなんだろう?
子供だから、仕方がない、か?
「詳しい事はプリントに書いといたから、明日送れて来ないよーに!」
流石はカカシ先生、もう完璧に立ち直ったか。
……後で追い討ち、かけてみようかな?
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あとがき
と、言う事で結局この話は鈴取り直前で寸止めと相成りました
何気なくですが、カカシの反応からナルト父の四代目はお茶目でデンジャーな人で、ナルトは確実にその血を受け継いでいると言う所が何となくでも想像出来れば何よりです
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