「え〜、今日から君達はめでたく一人前の忍者になった訳だが、しかしまだまだ新米の下忍、本当に大変なのはこれからだ!!」
何時の間にか消えた小人の変わりに幻術を解いて、周りの連中を適当に誤魔化せたな、何とか。
シカマルとシノ、それにサクラとヒナタの目が妙に厳しい気もするが……気のせいだと思っておこう。
「これから先、君達は里から任務を与えられる訳だが三人一組の班を作り、それぞれの班に上忍が先生として付き、その先生の指導の下に任務をこなして行く事になる」
やっぱり班構成って前と同じなんだろうか?
シカマルとか、ヒナタとか、シノと組むのも面白そうなんだけど、やっぱりサクラとサスケの三人で組まないと仲良くなるのは難しそうだから記憶の通りだと助かるんだが。
「班は力のバランスが均等になる様にこっちで決めた」
「えーーーーー!!!!」
はっきりと言うが、下忍レベルで好き勝手に班を組んで任務なんてまともに出来る訳無いだろ。
忍者アカデミー卒業生の中で最高レベルの連中が三人で班を組んだら確実に任務をこなせる班が出来るかもしれないけど、逆に最低レベル二人に最高レベル一人なんて班が出来たら最悪だぞ?
いや、ランクDとかの子供のお使いみたいな仕事だけを、絶対に戦いになったりし無い様な仕事――具体例としては芋ほりの手伝い、お婆ちゃんの代わりにお買い物とか――だけを選んでしているつもりならそれでも構わないかもしれないが、ここは木の葉の里だからなぁ。
大国に仕える里の忍である以上、そんな甘えた事をほざける立場じゃないんだけど。
……昔の俺も文句言ってたし、下忍になったばかりの子供にそれを理解しろとか言うのも無茶かもしれないが。
「次は七班、春野サクラ……うずまきナルト」
七班ってのも、サクラと一緒ってのも同じだけど、ここまで来た以上はサスケも一緒になる、かな?
でも、それはそれとして、そこまで落ち込まなくても良いんじゃないか、サクラ?
九尾の器に対する両親の反応から見て俺をどう言う目で見ているのかは知っているつもりではあるけど、いくら俺でも少しは傷つくぞ?
「それと、うちはサスケ」
チラリと横目にこちらを見てくるサスケに対してニヤリと、知人友人敵対関係にある人間全てが口を合わせて『悪魔の微笑』と言う評価を下して来た笑顔を浮かべて見せると、真っ青になって視線を正面に戻してしまった。
殺気を込めた視線を向けられたら殺気混じりの悪魔の微笑、別名『魔神の微笑』を向けてやるつもりだったんだが、残念だ。
……『天使の微笑』とか言われる笑顔もあるんだが、アレは別の意味で不味いからと妻であるサクラやいの達から禁止を言い渡されて止めたけど、今のサスケがどうなるか見てみたかったなぁ。
丁度、止める人間も今は居ない事なんだから。
「……あの、イルカ先生、この組み合わせってどうしてですか?」
ん〜、サクラ、力一杯俺と組むのが不満ですって顔に出てるな。
せめて表面ぐらいは取り繕おうよ、憧れのサスケもすぐ隣に居るんだから。
まぁ、そのサスケはちょっと真っ青になって違う世界に逝ってる様に見えなくも無いけど。
「班編成は上位の者と下位の者の組み合わせ、それにくの一を組み込んで平均になる様にする事を基本にして組んであるんだ。
だから、七班は成績トップのサスケと、体術は別にして最下位のナルト、そして座学でトップのサクラの三人を組んだ結果だ」
うん、七班がそうなった理由は……何となく、わかる。
実際は俺とサスケの面倒をカカシ先生に見せたかったからとか言う理由があるのかもしれないけど、サクラが組み込まれたのはそう言う理由なんだろうな。
「フ、フン、せ、せいぜいオレの足を引っ張ってくれるなよ、ドベ!」
「ばらすぞ」
何とか調子を取り戻そうとそんな事を言ったんだろうが、甘いな。
「ちょ、ナルト、サスケ君に何言ったのよ!!」
「さぁ?」
『悪魔の微笑』と共に答えると、サクラも静かになったな。
何かイルカ先生の顔も引きつってる様に見えるけど、気にしないでおこう。
「えっと、じゃ、皆、午後から上忍の先生達を紹介するから、それまで解散!」
「サスケ、昼飯食べてからで良いけど、約束忘れたら……わかってるな?」
「あ、あぁ」
釘も刺したし、とりあえず昼飯でも喰うか。
……兵糧丸だけどさ。
「あ、あのッ、ナルト……くん」
「ん、どした、ヒナタ?」
この時期にヒナタの方から俺に声をかけてくるなんて、珍しい事もあるもんだな。
「あの、ね……お弁当、持ってきたんだけ、ど……」
「俺に?」
「……うん」
昔は気が付かなかったけど、ヒナタって俺を男として見てくれた数少ない人間なんだよなぁ。
ヒナタも大切にしなきゃいけない。
「じゃ、一緒に喰うか」
「え、あ、の、良い、の?」
「当然」
自然と笑みが浮かんで来る。
こっちに戻ってきてから誰かと食事って言うと、この額あてを貰った時にイルカ先生とラーメンを食べて以来だ。
基本的にそれ以外は見張り対策と言うか、俺が真面目に修行してるって所を隠す為に影分身の一体を家に置いて、俺自身は兵糧丸食べて後は修行って言うかなりな無茶な生活を送ってるんだけど。
やっぱり、あの食卓を経験した後に一人侘しい食卓なんて可能な限り遠慮したい。
「じゃ、屋上行くか」
「う、うん!!」
『あーん』とか言ってヒナタを恥ずかしがらせるのも面白そうだなぁ。
……って、そうだ、サクラとサスケにちょっかい出したのどうしよう?
後で聞いた話によるとアレでサクラが俺を見る目、少し変わったとか聞いたんだけど。
……ま、なるようになるか。
――屋上――
「ん〜、ヒナタって料理、上手だな」
「そ、そう?」
「ああ、美味しい」
前の経験で知っては居たけど、この頃から上手だったんだな、料理。
大人になってから料理の勉強をしたとか言ってたけど、昔からやってたとんだな、実は。
……何で隠してたんだ?
「っと、そうだ、ヒナタ」
「え、な……に?」
「ん」
それはもう、本気で楽しくて仕方が無いと言う笑顔を浮べながら箸で少し小さく切り分けた出し巻き卵を差し出して見る。
うん、やっぱり真っ赤になって固まったな。
「ほらヒナタ、あーん」
「ぇ、あ、の、ナルト……くん?」
「どした?」
微笑んだまま、箸を差し出して微動だにせずにヒナタを見つめ続ける。
「あ、あ〜ん……」
いやぁ、ガキの頃は九尾の器って事で白い目で見られてたし、そう言う目で見ないでくれていた人達にしてもいたずら小僧を見る様な目で見られていたし、師匠と旅に出ている最中には色町に連れ込まれたりしてたからなぁ。
こう言うガイ先生が標榜する様な『青春!!』って言うモノ、味わった事無いから嬉しくて仕方ない。
真っ赤になってるヒナタには悪いけど、楽しいな、凄い。
それに、何よりもヒナタは可愛いし。
「こう言うのんびり出来るのって、良いなぁ」
「う、うん……」
頷いてくれたけど、ヒナタにはまだわからないだろうなぁ。
未来の事なんてわかる訳が無いから、一年以内に俺達のこんな日常は終る可能性があるって事を知らなくて当然なんだけど。
この僅かな日常を……いや、前はこんな日常無かったけど、とにかく、楽しんで欲しい。
いのとか、サクラとか、サスケLOVEを公言してる皆には、そう言う楽しみを経験するのは難しいかもしれないけど。
ヒナタやハナビ、それにテンテンとはデートとかもしてみいなぁ。
サスケとは……本来の姿とは別の姿に変化させて連れ回すのも楽しそうだ。
「美味しい弁当に良い天気。
それに可愛いヒナタまで揃って、幸せ者だな、俺は」
「……………ハゥ」
ん〜、ストレートな褒め言葉はヒナタにはまだ刺激が強過ぎたか。
ま、可愛い寝顔が見られたから良かったと思っておこう。
ついでに膝枕しておくか。
本当は、俺がして欲しかったんだが。
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あとがき
いや、本当はちゃっちゃと進む予定だったんですがヒナタで遊んじゃいました
うん、ヒナタは可愛らしいと再認識出来た一話です
……いや、ヒナタをちょっと出したいなって思っただけのはずなのに何故こんな事に?
ヒナタで遊べたから不満はありませんけど、鈴取り、次々回くらいに流れちゃいそうです
早くカカシとのやりとりとか見たいんですが
私の中でカカシってボケもツッコミも完璧にこなす人と言うイメージがあるから楽しそうなのに………アレ、なんか間違ってる気がして来た
それはともかく、次回はサスケをやりこめて、適当な会話を楽しんで見ようかと画策中です
何分私の文章は全て勢いなので矛盾点山盛りだったり、同じ事を繰り返したりするのはスルーしちゃってください
指摘されてもきっとさらっと流します………自覚してる事指摘されてもそれくらいしか出来ませんから
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