――卒業試験合格者説明会会場――


時間が、足りない。

イルカ先生に色々と問いただしてみたかったし、火影のじいちゃんやカカシ先生と色々と話しておきたかったし、サスケが暴走して大蛇丸の所に駆け込まない様に手を打っておきたかったし、ヒナタやハナビと逢っておきたかった。

他にも、テンテン、いの、サクラ、ハナ、紅、アンコにも逢っておきたかったんだけどなぁ。

今の身体を全盛期の頃に近づけておかないと中忍試験の時に苦労するから、優先順位を考えてほとんど何も出来なかった。

あそこで大蛇丸が出て来て、サスケに呪印なんて施さないんだったら今の状態でも十分なんだけどな。

「おはよ」

「おう、おはよう……って、何かテンション違わねぇか、ナルト?」

流石シカマル、あっさりと俺のテンションの違いに気付いたか。

シカマルだけがこの事に気付いたのはシカマルの頭が良いとか状況判断能力に優れているとかとは関係無く、ただイベントが重なったばっかりに火影のじいちゃんとかが気付かなかっただけって可能性が濃厚なだけだったりするんだけどな。

「疲れてんだ、色々と、な」

「ん〜、そか、じゃ、おやすみ」

「ああ、おやすみ」

……余裕だなぁ、シカマル。

ここでするのは基本的に班編成と担当上忍の紹介だけだから、別に寝てても問題は無いんだけどな。

キバ、シノ、チョウジ、シカマル、いの、ヒナタ、サスケが居る……うん、記憶の通りにまだ、サクラは来てないらしいな。

「…………懐かしいなぁ」

本当に、懐かしい。

って、そう言えば不合格になったはずの俺がここに居るのにさらっと流したな、シカマルの奴。

ま、額あてつけてるからそれを見たか、火影のじいちゃんからシカマルの父さん経由で聞いたんだろう。

何度かシカマルの家で夕食を御馳走になった事もあるし、何よりもシカクさんは父さんの友達だったって話だから俺の事も話題になりやすかったんだろう。

それにしても、この人数の中で下忍になれるのが九人か。

……本当に木の葉の里って腕の良い忍を排出する里とか公言して良いのか?

俺等の代、正確にはこの場に居る面子の中で中忍より上になった普通の家の子供ってもしかしなくても、サクラだけじゃないのか?

更に言えば中忍まで上がれた普通の家の子供ってもしかしなくてもサクラだけだな、そう言えば。

……流石に当たり外れが激し過ぎる気がするんだが、この結果は。

「ちょっと、そこの席通してくれる!」

と、そんな事考えてたらサクラ登場。

いやぁ、眼中に無い相手に対する辛辣さは相変わらずだな。

大人になってからは多少落ち着いたけど、ベースがこれだったからなぁ。

「ナルト、どけ!
 私はアンタの向こう側に座りたいのよ!!」

アレ、でも確かサスケってさっきまで俺の斜め前の席に……いや、何で普通に歴史通りの場所に席移動してるんですか?

「なんだよ」

「いや、女装させたら似合うかもなぁ、とか思っ……グォ!!」

「サスケくぅん、隣、良い!!」

俺の言葉にサスケがどう言う反応をするのか見たかったのに、失敗した。

それはそれとしてサクラ、目が逝っちゃってるぞ?

俺、この子とも結婚したんだよなぁ。

別に後悔なんてするはずもないと思うんだが、改めて考えると微妙に失敗した気がしなくもないのはなんでだろう?

…………あ、刺されたからか。

次から次へと嫁とか言って女連れ込むから刺されたんだよなぁ、そう言えば。

俺の自業自得なんだけどな、どう考えても。

まぁ、それはそれとして、サスケだ。

容姿の方は変化の術でどうとでもなるとして、チャクラの流れまでほぼ完璧に女のモノじゃなく男特有のモノに変わっている辺りは流石としか言い様が無い。

本来の性別を知ってる俺ですら事情を知らなければ気付けない程度の、まだサスケが未熟だからこそわかる僅かなチャクラの乱れ。

流石三代目謹製の術具だ。

でも、アレだな。

男の状態ですら綺麗だって思えるのに、勿体無いよなぁ、本気で。

「テメェ、ナルト!!
 サスケ君にガンたれてんじゃないわよ!!」

「どけ!」

いや、俺としてはサスケのファーストキスを奪いたいからこうしている以上は、この場から離れる訳にはいかない。

前回のあのアクシデントがまた………らっき♪

「「「「「………………………」」」」」

おお、空気が固化してるな。

俺もそれにならって固まったフリしてサスケのファーストキスを味わってるんだけど。

ん〜、修行にかまけて美容とかについてまったく気にして無いな、これは。

俺等の年なら食生活に気をつけて、睡眠をしっかりと取っていれば肌とか唇が荒れたりはしないはずなのに。

修行にしても、休息や食事は大切な事だぞ?

いや、そんな事を言ったらサクラを筆頭にしたくの一連中にフクロにされるから言うつもりはないが。

……アレ、何かサスケが涙目になってるんだが、もしかしてヤバイか?

何かタイミングとか逸した様な気がするし、でもこの表情でサスケが泣き出したらヤバイぞ、俺。

冗談でなく、再び黄泉路を歩む事になる。

もうちょっと年行って男っぽい顔になってれば別だけど、この年頃で、気の抜けきった素のサスケって表情が幼いし、女の子としての顔が垣間見えるから連中まで暴走させかねるんだよ。

ヤバイ、ヤバイ、どうする?

どうしたら良い、俺!?

「……うむ、なかなか良いコントロール、ぐっじょぶじゃ、蒼の」

「フン、こんなもの」

そんな会話が背後から聞こえてくるんですが、今日は影分身なんて使ってませんよ?

さらに言えば、この間影分身をしてからチャクラを外部へ供給なんてしてないんですが、何故居る?

「でも、さすがにこの人数に金縛りの術をかけるのは面倒ねぇ」

「主のチャクラを強奪しておる以上、未熟者等を縛る事なぞさほどの労力でもあるまいて」

って、うぉ、確かに身体動かねぇ。

いや、それ以前に何で俺まで縛られてますか?

「さて、お主等に恨みは無いが妾達にも事情が在る故に少々眠って頂こう」

「幻術・春眠香の術」

どうやら俺とサスケは術の対象じゃなかったらしく何も感じないが、視界の端々で怒りその他で顔どころか全身を真っ赤にした面々が次々と眠りについていく。

「……はぁ、お前ら、俺の影分身のはずなのになんでそんな自由なんだ?」

「フッ、儂等は主様の力を奪い取って目覚めし者達、その名も白ゆ……ハグァッ!?」

「そ、それは……ダメ」

胸を張り、明らかに危険な発言をしようとした黒いのを、白いのが何処からか取り出したはりせんで吹き飛ばしてのけた。

顔形は俺なのに、覚えのある誰がしかに似ている気がするのは何事だ?

「ナルト、テメェ!!」

「ん、すまん、コイツ等とちょっと話があるから待っててくれイ……」 「なッ!?」

さ、本名を俺に言われて固まってるサスケは放置して、この小人達と話しをつけなくちゃな。

サスケの事も気になるが、こっちも大切な話だ。

ここで話をつけておかないとこの後どうなるかなんて容易に想像が出来る。

俺は、無駄に地雷を踏んで突き進む趣味は無い。

……気付いたら地雷原のど真ん中に立っているって事はしょっちゅうだけど。

「フッ、主よ、妾達の事は気にせずに今の内に奪ってしまえ」

「……俺に何を期待している、言ってみろ?」

激しく不穏当な気配がするのは気のせいじゃないだろう、絶対に。

と、言うか、奪えとか言うなや。

サスケ本人には自覚ないだろうが涙目見上げ――本人は睨み付けたつもりだろうが――られて色々と前を思い出して限界が近いんだから。

「わかりやすく言うと、純潔を奪え、と」

「……………心惹かれる提案だな」

「ッ!?」

あ、サスケが真っ赤になった。

素顔知ってるだけに男の子の顔でも十分なダメージが与えられるな、俗に言う理性の糸と呼ばれるモノに。

医療忍術についても学んでるから火影のじいちゃんの指示でサスケの身体の中に埋め込んである変化の術を固定化させている術具を摘出する事も可能なんだよなぁ、俺。

「って、ダメだろう、無理矢理は」

「じゃがのぉ、コヤツはそれくらいせんと素直にならんのは御主も知っておろう?」

「いや、まぁ、確かにその通りだけど、流石に泣き叫ぶ相手を無理矢理ってのは趣味じゃない」

「儂の記憶違いでなければ、幾人かそうやって関係を結んで居ったろう、主よ」

あ〜、いや、まぁ、大蛇丸至上主義者だった多由也とか、抜け忍に育てられた盗賊団の娘とか説得も何も効かない子とかに無茶やった様な記憶がなくもないと言うかあるな、思い切り。

それは、まぁ、遠い未来の悪夢と言う事にしておこう。

実際、その子達も最終的には幸せになってたんだから問題は無い。

…………はず。

いや、そうだったら良いなぁって話なんですけどね。

って、今はそう言う話じゃない。

「あ、イルカ先生の気配が近づいて来た……仕方ない、サスケ、詳しい話は後でするから、逃げない様に」

「な、に?」

「逃げたら本名から何から何までくの一連中に暴露して、術具取り出して押し倒す」

「……ッ、何処に、逝けば良い?」

何か、誤字があったような気もするが全体的には間違えてないだろうから、別に由としておこう。

さて、人に見付かり難い所が良いんだが、何処にしようか?

「ん〜、じゃ、屋上に集合」

火影のじいちゃんレベル――イルカ先生が本気出した状態の実力の程はわからないけど――までなら何とか気配感知は出来ると思うから、問題は無いだろ。

「ま、その時に色々と説明するけど……泣くのはなしな?」

「誰がッ!!」

いや、涙目で言われても説得力なんて欠片ほども無いぞ、サスケ?

とりあえず、皆を起こしますか。

「あ、サスケ、さっきのは夢だったの一言で強引に皆を納得させるから、口裏併せ頼むな」

「……ああ」

さて、幻術の解除を済ませるか。






----------------------------------------------------------------------------------

あとがき

いや、サスケを女の子にした以上、こう言うリアクションもありなんじゃないかと書いていたら……小人が暴走してしまいました

小人の暴走は基本的に前回だけの予定で、後はちょろちょろと出てくるだけのはずだったんですが………アレ?

とりあえず、サスケを女の子にする以上、見詰め合った状態でキスを長時間してたら泣くぐらいの事はするだろうとか思ってやった事ではありますが……サクラがキレて殴りだすとか、そう言うシーンを書いたら原作まんまになっちゃいそうだとか思っての小人達の出現だったんです

それが何故あんな不穏当な発言を繰り出す危険なキャラに変化してしまったんでしょう?

意味不明にも程があります

あ、多由也と名もない女の子を落とすかどうかは完璧に未定です

それと……コミックだけで最近はジャンプは立ち読みもしてない状態なんでわからないんですが、多由也って死んでたりします?

いや、ナルトがそう言う事でもしなきゃ仲間に引き込めなかったとか、情報が入手出来なかったとか、そう言う在り得ない設定を有効にするには大蛇丸ってとても便利なもので

問題は、サスケに何処まで話すかだったりしますが、本気でどうしましょう?




前へ   戻る   次へ