――木の葉郊外の森――


「良いか、人の好みは千差万別、巨乳微乳貧乳と簡単に言えば胸だけでもまだまだ種類は分かれるんだ」

ちなみに、俺はそこら辺の趣味は無い。

いや、好きになればそんなの気にならなくなるし、妻達の一部がそれで暴走して巨乳派と貧乳派に分かれて血で血を洗う闘争の日々みたいな事が三日ばかり続いた事があるから、それについては言及しない事にしている。

三日で日々とか言うなとか改めて日数を考えると思わなくも無いが、あの日々を思い出せば、な。

ちなみに、巨乳派代表はヒナタ、貧乳派代表はハナビで、それだけ聞くとただの姉妹喧嘩と言えなくも無かった。

………あの破壊後を見てそんな世迷言を言う根性を俺は持ち合わせていなかったがな。

「ん、オヤブン? 顔真っ青だけど、どうしたんだコレ?」

「あ、ああ、いや、ちょっと、思い出さなくても良い事を思い出しちゃっただけだから、気にしないでくれ」

アレは、子供に語っちゃいけない、絶対に。

トラウマなんて持たないに越した事は無いんだからな。

「とにかくだ、胸のサイズ、ウェスト、ヒップライン、さらに顔立ち、身長、それらのバランスが大切なんだ」

……精神年齢は三十なんだよな、俺。

ガキに何を教えてるんだ?

いやいやアレだ、冷静になるな、俺。

中身はともかく外見は子供なんだ、思う様やんちゃしておこう、うん。

「じゃあ、実践だ、やってみろ」

「わかった、見てろよ、オヤブン!! 変化!!

煙が晴れると同時に現れた木の葉丸は、BWH全てが一m前後、早い話がドラム缶体系と呼ばれる女に変化していた。

年と立場から考えて木の葉丸の方が俺よりよっぽどリアルに女の身体を想像出来ると思うんだが、何でこんな事になってるんだ?

全体は狂ってるものの、手足とかの細かいパーツで見る限りだと結構リアルに変化出来てる。

………ま、前の時も最終的にはほぼ完璧なおいろけの術が使えてたんだからこのまま教えてればどうにかなるだろう、きっと。






――約三十分経過――


「ところで……何でお前はそんなに火影のじいちゃんに食って掛かるんだ?」

確か両親とも健在だったと思うが、少なくとも火影のじいちゃんの娘である木の葉丸の母親にとっては火影の孫じゃなくて普通の息子だと思うんだけど。

……ああ、もしかしてアレか?

何代か先の火影になって欲しいからそう言う目で見てるとかか?

まぁ、想像でしか無いから何とも言えないけど。

「……木の葉丸って名前……この里の名前にあやかってじいちゃんがつけてくれたんだ。
 でも、これだけ聞きなれた名前なのに……誰一人その名前で呼んでくれない!」

ん〜、両親が居るって事を考えると、やっぱり昔の俺と同じで冷静な目で周りが見えてないのか?

いや、エビスさんとか力一杯火影の孫とか連呼してる人って居るだろうから、俺にはわからない世界なのかもしれない、な。

「みんなオレを見る時やオレを呼ぶ時、ただ火影の孫として見やがんだ。
 誰もオレを認めてくんない、もうやなんだそんなの!!
 だから……今すぐにでも火影の名前がほしーんだ!!」

さて、昔と同じ事を言うか?

それとも、素直に今の俺の言葉をぶつけるか。

どうするかな?

考えるまでも無い、か。

「……………火影の名はそんな簡単な、軽いモンじゃない」

血反吐を吐いた。

それこそ生死の境を何度も彷徨った。

夢の為……。

いや、俺の場合は別の理由もあったけど、火影になる為とにかく身体を鍛え上げた。

様々な知識を学んだ。

術を、兵法を、外道を、正道を、邪道を、知り得る全てを学んだ。

それでも、足りない。

手の届く範囲を、里の皆を、家族を護る為にはそれでも足りない。

真の火影の名は……それでも、まだ遠い。

「その重さを、火影の名が背負うべきモノを理解して尚、火影の名が欲しいのなら……」

「な……なんだよ!!」

「このオレを、倒してからにしろ」

この身は火影に届かぬ身なれど、その試金石程度にはなるだろう。

我が身は、火影を目指し届かなかったモノなのだから。

「ッ、あ、オレ、は……」

殺気も何も出しちゃいないが、コレに応えようとするだけの気概はある、か。

悪くない。

今は応える事は出来なくても、年を考えればこれだけでも十分だ。

っと、エビスさんの気配だ。

来るまでもう少し間があるかと思ったんだが、途中着替えに寄ったおかげで早く見つかったのかもしれない。

冷たいなぁ、今は、まだ。

「見つけましたぞ!!」

殺意を覚えてるって程でも無いけど、子供に向ける類の視線じゃないよなぁ、コレは。

里の現状を考えると、今はこれが“普通”なんだけど。

「さっ、御孫様、帰りましょう!」

「ヤダ!! オレは今すぐじじィを倒して火影の名前を貰うんだ!!
 邪魔しにくんな!!」

やっぱり、一度や二度の言葉だけじゃあ子供には足りないんだろうか?

それとも、エビスさんに対する対抗心が表に出てさっきのやりとりが一時的にとは言え吹き飛んだか。

「火影様とは仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の理を知り、千以上の術を使いこなせてはじめ………ん?」

「変化!!」

ちなみに言っておくが、エビスさんが言ったのは火影になる為の最低条件だ。

実際はそれ+αが必要になるんだけどな。

それこそ、数え切れないほどに。

「おいろけの術!!」

で、そんな俺の思考に関係なくお色気の術使ってるんだが、アレだな。

造詣も甘いし、仕草もまだまだだ。

……さっきは出来ていなかった術をエビスさんへの対抗心だけで、成立させたって言うのは誉めるには十分かもしれないけど。

「あれ? 効かねぇ!!」

「な…なッ……!
 なんというお下品な術をおぉ!!!
 私は紳士です!!!
 その様な超低俗な術には決してかかりませんぞォ!!!!!」

紳士でも、

ダメ人間でも、

エロ人間でも、

ホンモノのおいろけの術の前では無力なんだけどな。

女性の裸は美の造詣の極致の一つだから、何人もの妻を抱いて磨き上げた最終進化形態の『真・おいろけの術』は神々しくて平伏すくらいだったりするんだが。

……今見せたら遠見の水晶でこっちを覗き見てるであろう三代目が本気で昇天しかねないから出来ないな。

今度、こっちのエビスさんとかカカシ先生とかには見せて反応を見てみたいけど、どうなるだろ?。

「御孫様!!
 そんなふざけた奴と一緒に居るとバカになる一方ですよ!!!
 私の言う通りにするのが火影へ至る一番正しい道なのです、ささっ、帰りましょう!!」

確かに、俺と一緒に居るよりは火影への道のりとしては確実だろうな。

最終的にどうなるかは別として、確かに基礎を学ぶ相手としてはエビスさんは最上級の人なんだから。

「ヤダァー!!!」

ま、だからと言って嫌がる子供をそのままって言うのも俺らしくない気がするし、止めるか。

「影分身の術」

「うっわぁあ、すっげぇ!! コレ!!」

……よし、七人の小人は居ないみたいだな。

「フン! くだらない!
 こう見えても私はエリート教師……ミズキ等とは違うのですよ……」

まるっきり悪役のセリフだけど、良いのかエビスさん?

それに、ミズキ相手に俺が本気を出したかどうかなんてわからないだろうに。

「変化!!」

「!」

普通のおいろけの術が効かないと言うのなら、見せてやろうじゃないか。

恋人が出来て磨きをかけられた『おいろけの術Ver.4』を!!

「……おにぃちゃん」 「あ、の、御主人、さま」 「えびすさまぁ」

裸だけでなくメイド服、裸ワイシャツ、首輪のみ等の俗に言うコスプレと言う名の秘密兵器を織り交ぜたコレが『Ver.4』。

この段階で克己心の塊か大蛇丸の同類でもなければ効果がでるはずだ。

ちなみに、Ver.2が影分身とおいろけの術の併用で、Ver.3が磨き上げたおいろけの術単品、そして『ver.5』が封印せざるを得ない究極の一。

男女問わずに使えば血の雨が振る『真・おいろけの術』となる。

ちなみに、男は鼻血、女はやった俺が叩きのめされる。

それに、そもそも誇れる様な術でもないんだけどな。

「………………カフッ!!」

っと、まぁ、それはともかく、やり過ぎたか。

鼻血が噴出す前に気絶したせいで口の中に血が流れ込んで軽く溺れたらしい。

ま、影分身の一体に処置させておけば良いか。

「名付けて、ハーレムの術」

「くっそおお!!! また眼鏡教師すら倒せなかった、コレ!!
 オレは早くみんなに認められる名前が欲しいのにィ、何故だコレ!!!」

こんな術使った直後に言うべきじゃないだろうけど、やっぱり真面目に行くか。

と、言うか、この術には反応しないのな、女装した俺には反応したのに。

負けたって言うショックの方が大きいのかもしれないが。

「そんな簡単に出来るか、バカ。
 火影の名を得る事は、人から認められる名を得るって事は……難しい何てモノじゃない。
 人を殺し続ければ名を獲られるかもしれない。
 命がけで任務をこなし続ければ名を獲られるかもしれない。
 何らかの形で里に貢献をすれば名を得られるかもしれない。
 だが、それは里の道具であるのと同義だぞ?
 お前が欲しいのは、そんな名か?」

カカシ先生が『車輪眼のカカシ』と呼ばれ、父さんが『木の葉の黄色い閃光』とか呼ばれてたように、俺も名は得た。

俺が過去に――正確には未来だが――獲た名は狐神。

幾度と無く里を救い、命がけの任務を数え切れないほどこなし、里の為に様々な技術や忍術を編み出した。

友を護り。

女を護り。

里を護り。

敵を殺し続けて獲た名だ。

結局、火影を越える評価だったのかもしれない。

それでも、俺は火影になる事は、火影の名を名乗る事は出来なかった。

血に塗れた深紅の狐は、例え守護者であったとしても恐怖の対象でしか無いらしい。

忍ならともかく一般人には妖狐と玉藻、それに俺との違いなんてわからなかっただろうし、実際あの当時の俺って怯えられる対象だったしなぁ。

ま、簡単に言えばアレだ。

血に塗れ過ぎたんだ、俺は。

名前を口にするのも恐ろしいとか言う理由で一部の人からは狐神としか人に呼ばれなくなっていたしな。

「何も考えずただ忍術を、生き残り敵を殺す術をただ己の中に叩き込め、才能さえあれば最年少の暗部にでもなれるだろうから有名になれるぞ?」

「……そんなのは、イヤだ」

「それなら、悩め、苦しめ、迷え。
 オレを認めてくれる人が出来るまで、認めてくれている人を見つける事が出来るまで、オレも随分と時間がかっかったんだ。
 その為には、覚悟しなきゃダメなんだ」

「………覚悟?」

「ああ、血に塗れる覚悟を。
 血の海に沈む覚悟を……って、コレはまだしばらく先の事だけど、とにかく、己の歩む先にある全てを受け入れる覚悟。
 木の葉の里に限らず、他の国の人間にも、他の里の忍にすら認められる火影の名を名乗るには近道なんて無い事を、果てなんて見えない道を歩むのと同義だって事を、な」

「………フン、偉そうに説教なんてしちゃってさ、コレ!!」

確かに、シャレにならないくらいに説教臭いな、自分で言っておきながら何かイラッとしたし。

「オレ、もう子分なんてやーめた!!」

前の時も思ったけど、子分って言うのも捨てがたいな、結構。

「これからは………ライバルだ!!」

ライバル、か。

前は最終的には負けたんだよなぁ、俺が。

「俺はもう、お前より少し前を進んでる。
 でも、何時かお前と火影の名を賭けて勝負してやるよ。
 それまで楽しみにしてろよ?
 木の葉丸!!」

…………どうも、俺はガキの笑顔が好きらしい。

こんな事でここまで嬉しくなるとは思って無かったよ。





----------------------------------------------------------------------------------


あとがき

いや、木の葉丸とエビスの口調を上手く捕まえられなかったばかりに二人の発言は原作に微妙な変化をつけただけでほとんどそのままと言う痛くて痛くて仕方が無い事になっています

………アレ、小人七人衆は何処に消えたんでしょうか?

ついでに、三代目と裏でこそこそと動き回るって話とか、カカシ・ヒナタ・ハナビ・サスケの四人と班決め前に出逢ったりさせようと思ってたのに

何時の間にか班決めの話になってますよ?

別にここから夜の間にこそこそ動き回ったとか、そう言う話に入っても構いませんが……エンドレスで長引きそうなんですよねぇ、そっちのルートに入ったら

…………ま、良いや、ちゃっちゃと班決めして同級生とかカカシとかとまともに対面しちゃいましょう




前へ   戻る   次へ