第三話



嫌な予感が的中した、かもしれない。

そこに居たのは、憔悴した“ように見える”同い年ぐらいの女の子。

貴族なんてやってると何時何処で政敵に襲われるかわからないって事で、メイジ達がディテクトマジックを使って調べておいてくれた。

結果は白。

私達が来る前に何故この森の中に居たのか、なんて話は聴取済み。

何でも、傭兵風のメイジ数人に両親を殺され、命からがら逃げ延びてここに来た、と言う事らしい。

あぁ、これは重要な事だが、三日三晩飲まず食わずで、との事だ。

……有り得ない。

傭兵風のメイジ数人と言うのなら、ほぼ間違いなく物取り、盗賊の類なのだろう。

が、本当にそれが傭兵風とは言えメイジであるのならば、この少女を連れ去らぬ訳がない。

メイジと言う事は貴族、もしくは元貴族と言う事。

それならば、はっきり言って女が商品になると知らぬ訳が無い。

身なりから見てそう裕福な家の娘と言う訳でもないだろうし、おそらく一番の狙いはこの娘となるだろう。

だと言うのに複数人のメイジから逃げ延び、しかも三日三晩森の中を走り抜け、森の奥深いここまで来たのに憔悴“しか”していない娘。

擦り傷も何も無く、衣服にほつれすらない普通の娘。

しかも空腹を訴える事無く、水を要求する事すらないそうだ。

何で皆、疑問に思わないんだろう?

本気で気付いていないのなら、ちょっと頭が痛い。

「ギーシュ、少し二人で話たいから、皆と一緒にここから出て」

「え、あぁ、うん、いいよ。 さぁ、皆、行こう」

私の表情から何か読み取ったのか、ギーシュは頷き皆を引き連れて天幕から出て行ってくれる。

残ったのは、私と怯えたような目で私を見る少女。

名前は、エルザ。

おそらくは、吸血鬼の少女。

「貴女の選択肢を、私は生憎二つしか用意出来ていない」

「あの、な、にを?」

迂遠に話しても仕方が無い。

率直に、ただ重要な事を告げよう。

「今ここで死ぬか、私の従者の一人として生きるかの二つ」

「何で、そんな事を言うの?」

「私はね、君が人を殺す事なく適量の血を吸って済ませている吸血鬼だ、なんて都合良く思う事は出来ないんだ」

ギシリと空気が軋む。

まずこの天幕の中で、次いで天幕を囲うように周囲から。

ギーシュのヤツ、私の態度から何かあると踏んでそんな行動に出ていたか。

まぁ、私もそれは予想出来ていたからわざわざディテクトマジックを使ったり、天幕の周囲に人が居るか居ないか確かめたりはしなかったんだけど。

「私が提案している選択肢は今ならまだ二つあるけど、私に害を為せば即座に選択肢は一つになるのは……わかるよね、エルザ?」

無言のまま、エルザの唇が引き結ばれる。

はっきりと言って、この状況は脅迫以外の何者でもないのだから、当然と言えば当然なのだろうな。

更に言えば私に、正確にはメイジに向けられる視線には確かな恐怖と怯えがあった。

おそらくだが、両親がメイジに殺されたと言うのは真実。

賭けだな、この状況。

少なくとも、私を道連れにして自殺覚悟の特攻を行う可能性だってあるのだから。

我が行動ながら綱渡りにも程がある。

家族にばれたら怒られるな、きっと。

……ギーシュや隊の皆にばれている以上、怒られる事は決定しているけど。

「私を従者にして、どうする気なの?」

「とりあえずは、私の種蒔きの手伝いをしてもらおうかと思ってる。
 そして、最終的には私の死後も、それを続けて欲しい。
 吸血鬼の寿命は、人の寿命を軽く凌駕しているんだろう?」

「……畑仕事?」

あぁ、そんな勘違いをされてしまったか。

いや、ある意味勘違いとも違うか?

微妙なところだが、正しくもあるような気がする。

「まぁ、そんなところだ。 
 ただし、耕すのは人の心、植えるのは意思、なんだがな?」

「どうやるの、それ?」

「さぁ?
 気が付いたら芽生えている事もあるし、気が付いたら別の種が根付いている事もあるから。
 私はただ私としてあるだけで、私の中に芽生えたモノが種をばら撒いていてそれが貴女の中にも根付いて、芽生えれば自然に広がっていくんじゃない?」

例えば、ギーシュがそうなったみたいに、ね。

「……おねーちゃん、どうして私をすぐに殺そうとしないの?」

「簡潔に言うのと、迂遠に言うの、どちらが良い?」

「簡潔に」

ん、つまらないな。

無駄に壮大で、無駄に物凄いストーリーを一瞬脳内に構築しかけていたと言うのに。

それなりに楽しめる話になる自信があったんだが。

「好奇心」

「え?」

「私の種は人間ではない別の種族の内にも宿るのか?
 私の意思は、私の種は恨みや怒りに染まった心を染め直す事はできるのか?
 そんな感じで湧き上がってきた好奇心を満たしてみたいと思ったんだ」

言葉にはしない、と言うか年頃の女の子でもある私としては出来ない好奇心の類もあったりするのだが、それはどうしようもなく不穏当だし、未来の話と言う事で今は忘れておこう。

「それで、良いの?
 私は吸血鬼で、今までに何人も人を殺してきたんだよ?
 今もそれを悪い事だとは思ってもいないし」

「生きる為に殺し合うなんてのは生存競争として今この時も世界中で行われている事だし、吸血鬼だからなんだって言うの?
 この世界で一番人間を殺しているのは、紛れも無く人間なんだから。
 戦争に権力闘争、場末の喧嘩に貴族の決闘、後はお金の為とか、殺す事が楽しいからとか、人間はそんなモノでもあるんだから、吸血鬼だからどうした、としか私には言えない」

ふむ、そんなに私の言う事は変だったかな?

何やら、必死になって怒りとか浮かべていたのに、ぽかーんとした顔になっちゃった。

長命の種族って事を考えるとこの見た目で私よりも長生きしている可能性もあるけど、口では私に分があるって事かな?

とりあえず、半ば以上脅迫しているのと変わらない現状では、確実に。

「それと、これが一番重要なんだけど私は助けられなかった誰かの為に、今を生きている誰かを殺す趣味は無いの。
 私は無意味な死は嫌い。
 殺すにしても、殺されるにしても、そこに意味が無いのであれば私は必死で抗うの」

「で、でもっ、私を、吸血鬼を殺せば名誉を得られるんだよ!?
 それに、今ここで殺しておかなかったら何時か、おねーちゃんの大切な人を屍人鬼グールにしておねーちゃんを苦しめたりするかもしれないんだよ!?」

「名誉なんて要らないし、そんな明日は信じない。
 例え私が信じなかった事に意味がなかったとしても、私はただ一つの未来を信じて、その為に動く」

「……ただ一つの未来って、何?」

「明日は、良い日だって事」

笑って、信じてみせる。

私だって大人だ。

世界が残酷なことも、明日がどうなるかわからないって事も、それなり以上に理解している。

少なくとも、芝村厚志は世界が残酷で、明日がどうなるかわからなかった結果としてクリスティナ・アイリス・ド・グラモンになった。

だけど、私はこれからも信じるし、疑わない。

実現出来るかどうかなんて知りはしない。

ただ、明日は良い日なんだ。

誰が何を言おうと。

誰が何をしようと。

関係無い。

世界は、そう信じる事によって変わっていくと信じた。

「な、によ、何よ、それ!?」

「私は信じた、ギーシュ達は信じてくれた。
 例えそれが何の意味も無い嘘だったとしても、それを口にした以上は、私がすべき事はただ一つ。
 絶対に後悔だけはしてやらない」

あの物語では、何と言ったかな?

嘘は吐かれた、だったか。

「昔、ある物語を読んでそれに影響を受けた馬鹿が居た。
 必要なら火に飛び込む決意を持ち、必要なら世界を敵に回す意思を持つ誇り高き人に、どうしようもなく憧れた馬鹿が」

「それ、が、何?」

「その物語でその言葉を口にした人はこんな事も言ってるの。
 我等は誇り。 誇りこそ我等。
 どの法を護るのも我が決め、誰の許しも請いはしない。
 私の主は私のみ。
 文句があるのなら、戦おう……。
 単純にして明快でしょう?
 自分が自分である為ならば、例え敵が何であろうとも折れはしないって宣言なんだから」

笑みがこぼれる。

本当に、どうしようもなく単純な話だ。

まぁ、貴族の私がそんな事を言ってもそう信じられる話ではないだろうがな。

私を知るギーシュ達なら信じられるだろうが。

「誓えと言うのなら、誓っても良いけどどうする?」

「何にも従わないって言う貴女が、何に誓うのよ」

「ん〜、まぁ、始祖の言葉や教えであろうと、王家であろうと、私の目的の邪魔になるなら無視する気で居るからねぇ。
 普通ならここは始祖に誓っててなるんだろうけど、私の場合は……
 ん、まぁ、これしかないか」

うん、一つだけしかない。

私が誓いとして示せるモノなんてそうはないんだから。

「クリスティナ・アイリス・ド・グラモンの名と、他の誰にも教えていないもう一つの名において誓う」

「もう一つの、名?」

「絶対に秘密にしなければいけない秘密、私が私であるとして証を誓いとする」

芝村厚志。

誰にも伝えるつもりの無い、私の名。

私の本質を示す、たった一つの名。

何時の日か、クリスティナ・アイリス・ド・グラモンとして男に恋をする事もあるかもしれないし、それがなくとも男の元に嫁ぐ事もあるだろう。

それでも、私は間違いなく芝村厚志なんだ。

その事実を伝える事以上の信頼の証なんて、今の私は持ち合わせてはいない。

「それが今、私の示す事の出来る最高の誓いだよ」

「……その誓いを聞いてから、決める」

ん、それで良いのかって顔だな。

この程度の提案すら飲めないのならば信用には値しないと、そう言いたい訳だ。

「結構。
 しばし私の監視下に居てもらうが、悪いようにはしないから」

「……今更、そんな嘘を言うなんて思ってないわよ」

ま、メイジに慣れたと言う訳ではないだろうけど、どうやら私には慣れてくれたらしい。

多少は、って言葉が頭につくんだろうけど。

「じゃあ、手付けを支払っておこうかな?」

「手付け?」

「渇いてるんでしょう?」

懐から取り出したのは、無駄なまでに研ぎ澄ましたナイフ。

そして、傷付けるのは私の指先。

傷痕になったら困るし、次からは水の使い手が側に居る時に使うか、見え難い場所にしておこう。

吸血鬼である以上は、治癒の先住魔法をエルザが使えるかもしれないから、それならそれで治療は任せても良いけど。

「だから、はい」

「え?」

「ほら、飲みなさい」

この世界の人間がこの行為をどう思うのかは知らないが、ちょっとした献血のようなモノだ。

干からびて死ぬほど飲まれたら困るけど、そうでなければ別に躊躇う必要は無い。

と、言う訳でそんなビックリした顔で固まられても困るんだけどなぁ。

「ちょ、吸血鬼に血を吸われるって事が何だかわかってるの!?」

「ちょっとした食事でしょう?
 確か屍人鬼にするには吸血によって殺さなきゃいけなかったはずだし、この状況で殺せるほど血を吸えるとはエルザも思わないだろう?」

「それは、まぁ、確かにそうだけど……」

まったく、さっきから時折もの欲しそうな目で人の首筋を凝視しておいて、私が気付いていないとでも思ったのか?

第一、私があんな提案をしておいて、血を提供しないとでも思っていたんだろうか?

飢えに苦しむ様を見て楽しむような趣味は無いと言うのに。

「貴女の立場はこれから私付きの侍女と言う事になるの、私が個人的に雇った、ね」

「私の食事を用意するのは、雇い主の勤めって、事?」

「まぁ、そう言う事」

「うぅ、じゃ、じゃあ……いただきます」

本気で気付いていない、か。

さっきから我慢出来なかったのか舌がちろちろ出てたり、妙に艶っぽかった事に。

身体が男の頃、しかも同年代の頃だったら完璧に落ちてたぐらいに艶っぽかった。

しかし、ちょっと失敗だったかもしれない。

指を舐めしゃぶられると言うのは、物凄くくすぐったい。

「ん、あむぅ……」

これはちょっと不思議な感覚、かな?

正直に言えば、ちょっと気持ち良い、かも。

問題だなぁ、コレは。

同性愛に目覚めたら、どうしよう?

いや、精神的には男と愛し合う事こそ同性愛なんだけど、でも、やっぱり、ね?

「んくっ、おいしー」

うぁ、その顔は止めて。

そんな、とろとろにとろけたような顔なんて。

流石にそんな顔をされると、その、照れる。

いや、ん、この思考は危ないから、ちょっと方向性を変えてみよう。

えっと、うん、そうだ。

こんなになるぐらいなんだから、よっぽど美味しかったんだ、私の血は。

処女の生き血って本当に吸血鬼にとっては御馳走らしい。

注意しておかないと、軽くのつもりで予定よりも多く吸われちゃうかもしれないな、コレは。

気をつけよう。

……ついでに、人前で吸わせてあげるのも、ね。

これは、見せちゃいけない。

男の前では貞操の危機が迫る事になりそうだし、女の前だと同性愛の疑いをかけられかねない。

「さて、それじゃあ私達の天幕に行こうか」

「え、私はここに居れば良いんじゃ?」

「ギーシュ達を信用していない訳じゃないんだけどね、私以外の人間にとって吸血鬼はそれだけ怖いって事」

「……あぁ」

先住の魔法を使い、オーク鬼に及ぶほどではないにしても強靭な肉体を持ち、狡猾にして冷酷な種族。

私からして見れば、身体能力が高くて少々特殊な魔法を使う血を吸う人間って程度の認識なんだけどね。

いや、狡猾とか冷酷って言う事が一番しっくりと来るのって間違いなく人間だから。

それを知っている私からしてみれば、怖がる事なんて何処にも無い。

吸血鬼最大のアドバンテージである、吸血鬼であるって事を私達はもう既に知っているんだから。

「ギーシュ、聞こえてるよね?」

「……あぁ、全部、ね」

「と、言う訳で今日は私達の天幕に連れて行くけど、手は出しちゃダメだからね?
 出すならちゃんと口説く、わかった?」

「いや、その、クリス?
 いくら僕でも初対面の吸血鬼を口説いたりは……」

「美少女が相手でも?」

「…………注意しよう」

ん、流石はギーシュ。

この世界で一番私に染まった人間だけはある。

種族の差など、些細な事だとよく理解している。

今回の場合は微妙に間違えている気がしなくもないけど。

「えっと、その反応で良いの、そのギーシュって子は?」

「私の双子の兄なんだから、当然じゃない」

「あ〜、なるほど」

説明になっていないのに、思い切り納得してくれたなぁ、エルザ。

出会ってからそう時間が経っていないエルザを納得させるほどに説得力が溢れる性格しているんだろうか、私は?

特殊だとは思っていたが、こんな反応をされるほどとは思っていなかった。

「そう言えば、吸血鬼って一回にどれぐらい血を飲めばどれぐらいの間満足出来るの?
 流石に毎日一定量以上上げてたら、私も死んじゃいそうなんだけど」

「ん〜、感覚としては、今の量を毎日と、普通の御飯でどうにかなると思う」

思う、か。

確定情報では無さそうだ。

いや、まぁ、言われてみれば当然か。

血を吸い尽くされて死んだ者を屍人鬼にするって言うんだから、食事の際に吸い尽くすのが前提みたいな感じだし。

とりあえずそれで様子見をして、最悪の場合は……ん、その時に考えよう。

そして、どうにかする。







「んぅ、いぢめちゃ、めー」

やれやれ、我が双子の妹殿はなんの夢を見ているのやら、本当にぐっすりと熟睡中だね。

僕なんて、未ださっきの戦闘の緊張が抜けきっていないと言うのに。

いや、クリスの場合は、緊張していたからこその熟睡なのかもしれないけど。

「……ねぇ、私って信用されてるのかな?」

「信用はしているだろうけど、それ以上にクリスはどうしようもないわがままなんだ」

「わがまま?」

「そう、わがまま」

意味がわからないって顔をしているね。

まぁ、付き合いが長くなければそう思っても仕方が無い、か。

「クリスは優しくもなければ、厳しくも無いんだ。
 ただ自分がそうしたいからそうする。
 そうなると信じたら、そうならない可能性は信じない」

「じゃあ、私が裏切ったら、どうなるの?」

「ふむ、そうだね。
 裏切りの内容によるけど、よほどの事じゃなければ叱って叱って、最終的には大号泣をして終わりだと思うよ?」

「……泣くの?」

「それはもう、物凄い勢いで」

今度は信じられないって言う顔だ。

短時間ではあってもクリスと会話した後にこの言葉を聞いたんじゃあ信じられないか。

でも、僕は嘘を言っていない。

何度か泣かせちゃったけど、僕の記憶にある最後に鳴かせてしまった時は凄かった。

出来そこないとは言え“カッター・トルネード”が飛んで来た時には本気でどうしようかと思った。

滅多に泣かないだけに、その分精神的にもダメージがあるし、アレだけはもう二度と経験したくはないな、本気で。

もし、クリスを泣かせずに済むのなら僕は喜んでエルフの集団の中に飛び込むね、きっと。

あぁ、いや、流石にそこまで行くと出来ないかもしれないけど。

「付き合いの短い間なら傷も少ないかもしれないけどね、付き合いが長くなると本当に辛いんだ、コレが」

「この子が泣くって、何をしたのよ?」

「ちょっと農家の子と喧嘩しちゃってね、父上達がそうするように平民扱いしちゃったんだけどそれがダメだったんだ」

あの裏切られたような顔は、本当に辛かった。

もちろん出来そこないのカッタートルネードも辛かったけど。

「そんなの、当然じゃない」

「それはそうなんだけど、クリスにとってはそれは当然じゃないんだ。
 生まれによって立脚すべき立ち位置が違うのは認めるけど、だからってそれを理由に他者を貶めてはいけない。
 貴族には貴族の権利と責務が、
 農民には農民の権利と義務が、
 商人には商人の権利と義務がある。
 ただし、それは公人として世間から与えられたモノであって、個人としてそれを普段も行使する必要も義務も無い。
 少なくとも、個人として付き合っている間柄の相手に公人としての立場を振りかざすのは、クリス曰く【めー】、と言う事らしいよ」

「そんなこと、言ってるの?」

あぁ、やはり信じられない、と言う顔だね。

はっきりと言って、これが貴族らしからぬ思考だと言うのは理解しているけど。

「まったく同じ事は言っていないよ。
 コレはクリスの言葉から僕が理解して、僕の考えとしたモノだから。
 つまりは、これがクリスの言う種、と言うヤツじゃないかな?」

「あ、種って、そう言うこと?」

「そう、クリスが蒔いて、僕の中に育った種だ」

誇り、と言うにはまだカタチを為しては居ないけど、嫌いじゃあない。

僕の内に育ったこの種は、誰の影響をどう受けていようとも僕だけのモノなんだから。

クリスが居なければ、そう思う事も無かったろうけどね。

「……変な双子」

「それは言われ慣れたね、僕はクリスの双子の兄なんだよ?」

「嫌な事に慣れてるのねぇ」

「はははははっ、それを言ったら君は今日からその変な双子の侍女になるんだよ?
 正確には変な、と言う言葉が当てはまる原因になった妹の方に」

あぁ、良いね。

本気で嫌そうな顔をしているよ。

でもこれが半年後、いや、場合によっては一週間後にどう変わっているのだろうね。

クリスに心酔する事になるのか?

それとも拒否反応を示すのか?

ただ、今の表情を見る限りだと拒否する事はなさそうだけどね。

クリスじゃないけど、本当に明日は良い日になりそうじゃないか。




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あとがき


さて、第三話終了、です

脅迫から説教と言う痛いコンボをやってしまいました

幸いと言うべきか行動を示さずに説教だけして全て終わり、と言うカタチにせずに済んだのは良かったとは思うのですが、これからで上手く描ければなんとかなるかな、とも思います

……性急な感もありますし、何だか無駄に難易度を跳ね上げちゃった気がするんですよねぇ(遠い目

魔法を使う上での特殊性とか、クリスが居る事によって周囲に与える影響とか書きたかったが故のストーリーなのですが、なんでエルザなんて出しちゃったんでしょうねぇ

……しかも年をもう少し取った状態のエルザを

いや、キャラとして考えるととても美味しいキャラなのに、外見年齢の問題で色々とあったからなんですが、ね?

欲を張らずに無難な方向に行った方が良かったですかねぇ(悩

まぁ、とりあえずアレです

何とかそう間を空けずに上げる事が出来ましたので、次話もやっぱり近日中に上がるかもしれません

あぁ、十分遅いとか言わないでくださいね?

最近の私としては十二分に早いと言えるんですから

投稿中の長編の更新を二ヶ月内にするとか無駄な宣言をしてしまったので、その関係でペースは乱れるかもしれませんが、なんとか定期的に行きたいと思います

細々と続けるつもりはありますので、更新が滞っても生暖かく見守ってやってください

でわ、また次の更新でお会いしましょう




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